米国では、コロナ禍に伴う経済活動の低迷を背景に商業用不動産価格が大きく落ち込む一方、住宅価格は前年比+6%程度と堅調に推移している。新築住宅と中古住宅の販売戸数が足元で急回復するなど、住宅市場は米国における数少ない景気下支え要因となっている。
住宅市場が堅調に推移している理由として、コロナ禍により、①春の住宅購入シーズンの需要が夏場にシフトしたこと、②在宅勤務が普及し、居住スペースがより広く、社会的距離を十分確保できる郊外物件への購入意欲が高まっていること、などが指摘されている。
金融面からみれば、金利低下に加えて、本年12月に予定されているGSEによる追加手数料徴収(注)もあり、住宅ローンのリファイナンスが急増しており、MBS組成額も増加傾向にある。こうしたなか、FRBは、流動性供給策の一環として、4月以降、エージェンシーMBSを大量購入しており、MBSの増額分を吸収して住宅ローン市場の活況を支えている。
(注)「adverse market fee」。GSEがコロナ禍を凌ぐ名目で導入。12/1(当初9/1)より、ローン申込者は0.5%の追加手数料を徴収される。
ただし、インフレ調整済の実質住宅価格は、リーマンショック前の住宅バブルのピークを超えている。住宅価格の上昇ペースが一段と加速すれば、次の住宅バブルの生成・崩壊を招きかねない。今後の米国経済のリスク要因として、住宅市場の動向を注視する必要がある。
コロナ禍の下でも堅調に推移する米国住宅市場(PDF:275KB)
