コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

リサーチ・レポート No.2020-023

米国大統領選挙の展望 ~今後を見通す4つの「視点」~

2020年09月24日 井上肇


米国大統領選挙の世論調査では、民主党のバイデン候補が共和党のトランプ大統領に対して支持率で大幅にリード。それにもかかわらず、有権者や市場参加者はバイデン氏勝利に確信が持てていない状況。こうした乖離が生じている一因として、バイデン支持者はトランプ支持者と比べて熱意が低いことが指摘可能。もっとも、現時点でのバイデン氏のリードは、トランプ氏が大逆転した2016年と比べても大きいため、そうした事情を考慮しても、バイデン氏の勝利がメインシナリオ。ただし、トランプ氏と直接対決する今後の討論会の結果次第では、情勢が大きく変化する可能性もあり、投票日まで選挙戦を慎重にみていく必要。

両陣営の選挙公約をみると、国内政策では、製造業・雇用重視の姿勢は共通する一⽅、税制を巡っては追加減税を目指すトランプ陣営と、増税を財源に歳出拡大を目指すバイデン陣営の違いが鮮明。外交政策では、トランプ陣営が「米国第一」主義を堅持する一⽅で、バイデン陣営は国際協調路線を示すなど、対照的。中国に対してはどちらも強硬姿勢ながら、バイデン陣営はトランプ政権の関税合戦には否定的。両陣営とも景気刺激的な政策と抑制的な政策が混在しており、選挙後は勝利した陣営が政策パッケージの中からどの政策を取捨選択するかが先行きを左右。

大統領・議会選挙の結果は、確率が比較的高いものとして4つのシナリオが想定。現時点で最も確率が高い「ブルーウェーブ」シナリオでは、バイデン陣営が掲げる大規模な増税と財政支出拡大が実現する可能性が上昇。もっとも、当面は新型コロナによって落ち込んだ景気の回復が優先課題であるため、増税よりも財政支出拡大が先行する公算大。どちらが大統領に就任しても、議会のねじれが継続する場合は、大規模な政策変更は実現せず、大統領令によって実現可能な政策が優先される見込み。

今回の選挙結果は、日米関係や日本経済にも影響を与える見込み。とりわけ、懸念されるのは、米中対立の影響の波及。これまで日本は両国間でバランスをとることで決定的な対立構造の回避を目指してきたものの、今後は米国からより明確な姿勢を求められる可能性大。米国に日本が最重要パートナーであることを認識させるとともに、米中対立がこれ以上エスカレートしないように能動的に動くことが必要。

米国大統領選挙の展望 ~今後を見通す4つの「視点」~(PDF:1386KB)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ