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CSRを巡る動き:持続可能な社会づくりに向けた次世代への教育

2020年10月01日 ESGリサーチセンター


 2020年度に入り、新しい学習指導要領の運用が段階的に始まりました。各教科のなかに、「持続可能な社会」の構築に向けた視点が大きく掲げられたことが特徴です。例えば、自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察すること、身近な消費生活と環境を考え工夫をすること、などが定められています。教育を通じて、環境問題や社会課題に関心を持ち、それらの課題解決に資する次世代の人材を育成することが求められているといえます。

 一般的に、若者ほど環境問題や社会課題への関心は高いといわれます。株式会社日本総合研究所でも、2020年5月に、全国の中学生、高校生、大学生を対象に、SDGs等への認識や理解に関するアンケート調査(以下、「本調査」)を実施しました。そこでは、国内や海外の環境問題への関心を持つ(「とても関心がある」、「やや関心がある」)若者は、全体の46.8%と約半数程度に上りました。容易に想像されるように、中学生(19.6%)よりも高校生(54.4%)、高校生よりも大学生(61.6%)と年齢が上がるにつれて関心を持つ割合は大きくなっていきます。世の中の全体像に対する理解が進み、自身の将来に脅威が及ぶ可能性を敏感に感じ取っている様相が窺えます。

 「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」という考え方は決して新しいものではありません。1992年の国連地球サミットで採択された文書にも、持続可能な開発の実現に向けて教育が果たす役割が記されています。2002年のヨハネスブルグサミットでは、「持続可能な開発のための教育の10年」と題するイニシアチブが提唱され、2005年から2014年までの10年を「国連ESDの10年(DESD)」と定め、ユネスコが主導して取り組みが進められてきました。その意味では、今回の新しい学習指導要領の運用開始は、わが国が世界の潮流にキャッチアップする大きな一歩と評価できるでしょう。

 このあと、克服すべきハードルもほぼ明らかになっています。環境問題や社会課題の解決に関心を高く有する若者たちが、実際に行動を取捨選択する状況が生まれるのかという点です。本調査では、洋服や食べ物、文房具、ヘアケア商品、電子機器について、環境問題や社会課題に取り組む企業の商品であれば、高い金額を払ってもよいかを尋ねました。「よい」と回答した若者は、半数以上となりましたが、実際に、環境問題や社会課題に取り組んでいる企業の商品かどうかを意識して購入している若者は約2割にとどまるという結果でした。また、環境問題や社会課題に取り組んでいる企業への投資の意欲を持つ若者は全体で68.3%でしたが、ESG投資やSRIという言葉を学んだことがある若者は21.6%にとどまるという結果でした。

 教育界には、背景や考え方を教えることはできても、特定の商品や企業を応援することに繋がる内容は教えられないという不文律が存在しているように見えます。他方で、若者の側には、知識としては理解しても、実際に行動を取ろうとしたときには、情報過多で、何が真実か分からないという行動変容の壁が立ちはだかっているように見えます。究極的には、「データや情報を分析する能力」、「コミュニケーションを通じて他人と共通の価値観を形成していく能力」を育むことが教育にできる全てのことだという指摘もありますが、企業の役割も決して皆無ではありません。単に自社が「社会や地球に優しい」とアピールするだけではなく、若者たちにデータアナリシスの機会を提起したり、ステークホルダーとして若者を位置づけ、積極的な傾聴や意思決定への反映を実践していくなどの例も出始めています。新しい学習指導要領の運用開始は、企業に対しても、新たな役割発揮の機会を生み出しているといえるでしょう。


本記事問い合わせ:小島 明子
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