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リサーチ・レポート No.2020-022

コロナ危機下のマーケットの急回復をどうみるか

2020年09月17日 大嶋秀雄


コロナ禍を受けて、主要国の実質GDP成長率が戦後最大の落ち込みとなるなか、マーケットは、日米株価がコロナ前の水準まで戻すなど、急回復している。この背景として、以下の3点が挙げられる。
①主要中銀による迅速なスワップライン構築等により、金融システム不安を回避した
②各国政府がロックダウンと同時に迅速な経済対策を講じたため、悪影響の波及が抑制された
③上記の結果、マーケットにおいて、深刻な経済減速は短期で終わるとの見方が早期に織り込まれた

足許では、大規模な金融緩和により積み上がった流動性がマーケットに流入しており、米国株式市場では、ブラックマンデー前やITバブル期などにみられた「企業収益が悪化する中での株高」が進行している。こうした動きを支えているのは、①実体経済の早期回復、②金融緩和の長期化、③コロナ禍を受けたIT産業の成長などに対するマーケットの「期待」である。

株価ボラティリティが高めで推移し、投資先の選別も行われている状況に鑑みれば、マーケットにも不安心理があることが窺われる。先行きの不確実性が高く、今後、感染の深刻化や企業倒産の増加による実体経済の回復の遅れ、IT産業の業績伸び悩み等により、現在のマーケットを支える期待が剥落すれば、マーケットが調整局面入りするリスクは高い。

一方で、FRBを始めとする主要中銀が、雇用悪化やデフレを警戒して過度な緩和を続けた場合、リーマン・ショック前のように、マーケットが調整されずにバブル膨張につながる恐れもある。

これらの点を踏まえ、今後、市場関係者は、以下の3点に留意する必要がある。
①実体経済の先行きの不確実性が高いことを念頭に、マーケットの足許の動きや先行きを楽観せず、経済データ(特にハードデータ)や企業業績などの”実績”で逐次状況を確認すべき。
②金融当局が、実体経済の回復を急いでバブル膨張を黙認するのか、または、リーマン・ショックの教訓から過度な緩和を回避するのか、政策運営を注視すべき。
③世界的に低金利環境が長期化すると見込まれるなか、利回りを追求するノンバンク等による過度なリスクテイクが、信用バブルの拡大につながらないか注意すべき。

コロナ危機下のマーケットの急回復をどうみるか(PDF:1967KB)
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