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ビューポイント No.2020-016

ウイズコロナ下での脱・外需依存成長の途ー地方・大都市連携による内需開拓を

2020年07月31日 山田久


WHOが新型コロナウイルス感染症によるパンデミック宣言を事実上行ってから、4カ月余りが経過したものの、事態終息の見通しは立っていない。わが国でもいったん抑え込んだ新規感染者数が、6月後半以降再び増加傾向を強めている。社会経済活動へのダメージを勘案すると、厳しい活動制限はできるだけ避けたいところであり、感染症への対処法・治療法が徐々に分かってくることで、経済社会活動への制約は緩めていくことが可能になると考えられる。その一方で、人々の活動の自由度が高まれば、新規感染者が増加してくるため、それによる医療崩壊のリスクが高まれば、そうした地域ではある時期、大なり小なり行動制限を強めることが避けられない。いわば「ストップ・アンド・ゴー」の状態が相当の期間続くとみる必要がある。

新型コロナウイルス感染症の終息がいつになるにせよ、少なくとも向こう数年にわたって外需依存は困難化する。国際的な貿易・投資活動の回復が緩やかになることが予想されるからである。もっとも、コロナ危機以前から、すでにグローバル化の流れにはブレーキがかかり始めていた。パンデミックを経て、米中両国政府ともに国内政治事情から対外スタンスを強硬化させざる得ない状況になり、世界の2大国間で経済関係がデカップリングされていくことで、世界的に貿易・投資が相当の期間にわたり低迷することが懸念される。

コロナとの闘いのために、各国の政府・企業ともに財政事情・財務体質が大きく悪化している。このため、コロナ問題が終息した後は政府の財政状況、企業の財務体質の健全化が大きな課題になる。それは、投資よりも借金返済を優先せざるを得ない状況が生まれることを意味する。このように、ウイズコロナの局面はいうまでもなくアフターコロナの局面に移行しても、しばらくは各国の成長率は低下し、結果として国際取引も停滞して外需依存成長は難しくなることが予想される。

にもかかわらず、わが国が経済成長を追求する必要性はむしろ高まる。わが国の政府債務が危険水域にまで膨張しているからである。非効率な政府部門の膨張が民間活動を大きく圧迫し、国民生活水準の大幅な切り下げが余儀なくされていく事態を避けるには、極力早い段階で財政健全化に本腰を入れる必要がある。それには自然増収・歳出カット・増税を組み合わせていく必要があるが、いずれの手法も経済成長率を引き上げることが大前提になる。

人口減少で売上数量がマイナスになっても、それを上回る平均販売価格の引き上げができれば、企業は増収増益が可能になり、経済は持続的な成長を達成できる。単価の引き上げを可能にする「量より質の成長」を目指すことが重要で、企業としては「高品質・高価格・高賃金経営」を追求する必要がある。ただし、当面懸念されるのは、現状の危機防衛型の産業保護・雇用維持最優先の政策スタンスが長期化し、一部の寡占企業と多くのゾンビ企業が併存する「長期停滞型デフレ経済」に再び舞い戻ることである。それを避けるには、ウイズコロナからアフターコロナに向けて進む経済社会の変化の方向性を見据え、ヒト・カネを成長分野にシフトさせることが重要である。その経済社会の変化の基軸となる方向性は「デジタル化」と「戦略的輸入代替(医療・衛生・食糧など「生活安全保障」分野での自給率引き上げやアウトバウンド観光需要の国内取り込み)」である。

「デジタル化」がもたらす地方再生の可能性に注目すれば、Eコマースの拡大により、各地域の特産品や埋もれた優良企業の部品・製品の全国各地への販路が広がるほか、テレワークの普及により、大都市部ホワイトカラー人材の知識やスキルを地方企業が活用できる可能性が飛躍的に高まる。大都市部ホワイトカラーにとって、移住を伴う地方企業への転職のハードルは高いが、大都市部で住み続けながら「テレワーク+出張」という形であれば、ハードルは大きく下がる。そうした形態で、経理や総務、人事、広報、営業、商品企画など、長年働いて身に着けた専門スキルを、専門人材の不足する地方企業に提供できれば、ウィン・ウィン関係が構築できる。

官・民のファンドから出資を受ける地方再生のための持ち株会社を設立することも提案したい。その持ち株会社が経営の苦しい地元企業に投資するとともに、大企業人材の専門能力を活用しつつ、事業再編を進めて地域全体を底上げする取り組みを進めるのである。持ち株会社の「CEO」には、地域のリーダー的な経営者が就任し、社外取締役には再生事業を請け負ってきた有能な人材が就くことで、コロナ危機を奇貨として地方経済の体質強化を実現する。こうして大都市部ホワイトカラーの持つノウハウ・スキル・人脈を活かし、地方企業がその潜在力を顕在化させ、「高品質・高価格・高賃金経営」企業が増えていけば、日本全体としての内需主導成長の可能性が開けていくことになろう。

ウイズコロナ下での脱・外需依存成長の途ー地方・大都市連携による内需開拓を(PDF:776KB)
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