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「ウイズ・コロナ」から「アフター・コロナ」につなぐ雇用対策-「良質な雇用」創出のための安全網と「シェアリング型一時就労」

2020年06月12日 山田久


2020年4月の完全失業率は前月比0.1ポイント上昇の2.6%にとどまったが、この背景は失職者の多くが職探しを止めたためで、就業者数の季節調整済値は前月比107万減と記録的な落ち込みとなった。経済的理由で働く必要性はあるものの、さしあたり職を探していないディスカレッジド・ワーカーがかなり存在しており、実態的な失業率は見かけよりも相当程度高いとみられる。さらに、休業者が激増しており、休業者やディスカレッジド・ワーカーを含めれば、4月の潜在的な失業率は10%を上回る計算である。

今後景気が順調に戻して「V字回復」となれば、潜在的な失業は顕在化しない。だが、緊急事態宣言解除後も、感染を予防しながらの経済活動再開とならざるを得ず、これから先しばらくの経済の回復水準は一定レベルにとどまる可能性が高い。今後耐えきれない企業や産業が徐々に増えていき、失業率が上昇傾向を辿る公算が大きい。

こうした事態に対し、政府は矢継ぎ早に対応策を講じており、その中心施策となっているのが「雇用調整助成金」の拡充である。執行面でのハードルがボトルネックになっていることが問題視されるなか、申請書類の簡素化や手続きのオンライン化も図られることになった。しかし、同様の制度のあるドイツに比べて政策の実効性は大きく劣り、小手先の改善を行っても限界がある。それ以上に、雇用維持を狙った雇用調整助成金の効果を過大評価すべきでなく、非正規労働者では十分な雇用維持が行われていない。企業の雇用維持機能を強化することは重要だが、それにとどまらず今求められているのは、失職を余儀なくされた人々を救済する多様なセーフティーネットである。

ドイツとの比較でいえば、そもそも失業給付のカバレッジが小さいことに加え、第2の失業保険といわれる失業扶助制度の充実度合いが決定的に異なる。リーマンショックの前後に非正規労働者の保護の弱さが社会問題化し、「求職者支援制度」の創設をはじめ様々な対応策が講じられた。しかし、実は依然として不十分な点が多かったことがいま露呈しており、さらにフリーランスの増加などその後の状況変化への対応も先送りされてきた。今回付け焼刃で行われた諸施策も含め、改めて全体を見直し、雇用のセーフティーネットを再構築することが求められている。

雇用のセーフティーネットの充実は、直接的には財政負担を増やすファクターとなる。この観点から重要なのは、雇用のセーフティーネットの具体的な設計に当たって、支援対象者が「良質な雇用」に就くことに効果があるものとしなければならない点である。十分に練られたセーフティーネットの拡充は、短期的には国家財政にマイナスに作用しても、中長期的にみれば経済成長を促して人々の所得を増やし、その結果として財政健全化に貢献する。コロナ危機対応で財政悪化が不可避な状況下、この観点は一層重要である。

具体的には北欧諸国とりわけスウェーデンの在り方が参考になる。同国では弱者救済よりも敗者復活を主眼としており、失職者を職場に戻すとともに賃金を高めるための就労支援と能力開発を主軸とする内容である。それを絵に描いた餅ではなく、機能する施策にしている秘訣は、産官学・政労使の異なる主体間の密接な連携体制であり、政策評価を通じた不断の改善努力である。

上記のほか、コロナ危機下の特有の状況における新たな仕組みとして「シェアリング型一時就労」も提案したい。事業の大幅縮小で一気に人手が過剰になった産業から、人手不足にある産業・企業に人材を「レンタル」する仕組みであり、それは苦境にある産業・企業がアフター・コロナでの事業再開に備えて人材を確保しつつ、雇用維持の枠組みを保持することで仕事の無くなった人々の生活不安を軽減できる。「シェアリング型一時就労」が促進されれば、それにより労働者が給与を得ることができる分、財政支援の必要額は抑制することができる。異なる産業の融合が進むきっかけとなり、アフター・コロナに向けた産業構造転換につながる可能性も展望できる。政府はその促進・普及のために、①求人・求職情報の共通プラットフォーム創設、②人材「レンタル」の形式の類型化と使用者責任などルールの指針づくり、③「助成金」によるインセンティブの付与、に取り組むべきであろう。

「ウイズ・コロナ」から「アフター・コロナ」につなぐ雇用対策-「良質な雇用」創出のための安全網と「シェアリング型一時就労」(PDF:1020KB)
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