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JRIレビュー Vol.8,No.80

欧州経済見通し

2020年07月31日 井上肇高野蒼太


ユーロ圏・イギリス景気は、2020年3月以降、新型コロナ感染拡大防止のためのロックダウンによって急速に悪化した。その後、経済活動が段階的に再開されたものの、景気回復ペースは国ごとにばらつきがみられる。今後の展開は、各国政府やEU、ECBの政策対応、そしてBrexitの行方がカギを握る。

ユーロ圏では、感染拡大の深刻度合いや経済構造・就業形態の違いなどから、景気の落ち込みは南欧諸国で顕著になっている。一方、財政余力の乏しい南欧諸国の新型コロナ対策の規模はドイツなどに比べて見劣りしている。こうしたなか、ドイツとフランスが「復興基金」案を共同で提案したものの、南北格差の是正には不十分な内容となる見込みである。また、ECBの金融政策については、実体経済の大幅な需要不足が徐々にしか解消されず、インフレ圧力は高まりにくいため、資産買い入れの長期化が予想されるほか、利上げ再開は早くて2023年以降となる見通しである。

イギリスとEUは、Brexit後の新協定について年内の合意を目指すものの、依然として多数の争点が存在しており、年内の包括的なFTAの締結・発効は困難とみられる。最終的には、物品貿易等に絞った簡易的なFTAの締結で妥協すると予想される。

以上を踏まえ、景気の先行きを展望すると、ユーロ圏・イギリスともに年前半は大幅なマイナス成長になる見込みである。夏までに新型コロナの流行が収束するとの想定のもと、年後半以降は回復基調を辿るものの、そのペースは緩やかなものとなろう。また、イギリスでは初期対応の遅れから感染状況が深刻化しており、景気の本格的な回復にはユーロ圏以上に時間を要する見通しである。

中長期的な観点からアフターコロナの欧州経済を見通すと、これまで輸出増加や移民流入といったグローバリゼーションの恩恵を受けてきた欧州経済にとっては、反グローバリズムの加速が大きな逆風となる。また、銀行部門が脆弱なイタリアでは、将来的に財政危機と銀行危機の連鎖が生じる可能性がある。欧州では、金融市場の緊張が高まるまで思い切った政策対応が出てくることは期待できないため、今後も危機を克服していく過程で、財政面などの統合が時間をかけて強化されていくとみられる。
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