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米中ハイテク対立が台湾経済に飛び火―ファーウェイ制裁で台湾GDP が0.9%減少 ―

2020年06月04日 野木森稔


5 月15 日の米国によるファーウェイへの制裁強化では、取引規制対象が米国製品直接取引だけでなく、半導体製造装置など米国の技術を用いた外国製品にも拡大。より具体的には、これまでの規制の抜け道とされていた受託生産取引(米国製品を直接取引せず、ファーウェイ子会社ハイシリコンで設計、TSMCに委託し半導体を製造する)を止めることが狙いとなっていた。

これにより台湾TSMCはファーウェイとの取引を失い、大きな損失を被る。半導体産業は台湾経済の主力産業だが、なかでもTSMCはファウンドリという形態で世界一の生産規模を誇り、その付加価値は台湾GDPの4.6%(2018 年)を占める。また、TSMCは2020 年に設備投資150~160 億ドル(GDP比2.5%)を計画。今回の米国による規制強化でTSMCがファーウェイとの取引を失うと、台湾GDPを0.9%押し下げると推計される。

さらに規制が強化される場合、「第2のTSMC」が現れる可能性がある。ここ数年で中国向け半導体輸出のシェアを大きく高めている韓国は、規制強化の影響を受けやすい。韓国企業はどのようにバランスをとって米中両者と関係を維持していくのか注目される。また、米中対立がエスカレートするなか、日本企業にとっては中国ハイテク市場でのチャンスは着実に広がっている。しかし、取引を拡大する場合、米国の規制強化に巻き込まれるリスクが高まることには注意を要する。

これまで台湾は中国と強い経済関係を構築してきた故に、政治的関係の悪化が経済に与える影響が非常に大きくなっている。そうしたなか、今回のような米中対立の激化は、台湾の中国離れを進めることにもなり、台湾経済の下振れリスクを高めることになる。また、中台関係とは深刻度は異なるが、各国政府も米中とのバランス外交が難しくなり、対立に巻き込まれる可能性は高まっている。企業の経済活動を過度に制御することは肯定できないが、日本企業に対しても米国のエンティティ・リスト掲載企業との取引が急速に増えている場合は、政府による管理強化などが経済リスクを低減のために必要となってこよう。


米中ハイテク対立が台湾経済に飛び火―ファーウェイ制裁で台湾GDP が0.9%減少 ―(PDF:665KB)
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