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ビューポイント No.2020-009

【新型コロナシリーズNo.25】
新型コロナ対策で露呈したマイナンバー制度の課題

2020年05月28日 岩崎薫里


10 万円の特別定額給付金のオンライン申請を巡る混乱は、申請システムに問題があったこと、自治体業務の実態を政府が把握していなかったこと、そして何よりも、マイナンバー制度が社会に浸透しないなかで、これを使うと生じかねない事態を政府が想像できなかったこと、が招いたものである。

マイナンバー制度には、国民生活を支える社会基盤としての側面のほか、行政のデジタル化を推進する基盤としての側面がある。マイナンバー制度によって、オンライン上での個人識別、本人認証、電子署名を安全に行いながら行政機関と国民をつなぐことが可能なためである。ところが、マイナンバー制度はいまだ社会に浸透しておらず、国民生活を支える社会基盤としての役割も、行政のデジタル化の推進基盤としての役割も十分果たしているとは言い難い。それどころか、10 万円の特別定額給付金のオンライン申請を契機に、①国民の多くがマイナンバーカードを持っていない、②持っていても使っていない、③使うとシステムが対応できない、という事実が浮き彫りとなった。

マイナンバー制度が社会に浸透していかないのは、ユーザーである国民の立場に立った制度設計になっていないためである。制度が複雑で一般国民にはわかりにくいうえ、マイナンバーカードとマイナポータルのサイトはデザインや使い勝手の面で問題がある。また、マイナンバーカードの取得は任意でありながら、取得の明確なメリットが用意されてこなかった。

わが国における新型コロナ対策の遅れと不首尾を目の当たりにして、行政のデジタル化の必要性が一層強く叫ばれるもと、その推進基盤であるマイナンバー制度の改革は必須である。マイナンバー制度の抜本的な見直しに向けた長期的な取り組みを行いつつ、短期的には、現行制度の枠内でどう改善できるかを考える必要がある。まずは多くの国民がマイナンバーカードを取得し、日常的に利用するための仕組みづくりを優先するべきであろう。

新型コロナ対策で露呈したマイナンバー制度の課題(PDF:602KB)
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