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【新型コロナシリーズ No.23】
新型コロナ禍が促す公的セクターのデジタル革新

2020年05月20日 野村敦子


今回の新型コロナ禍で、必要に迫られる形で急速にデジタル化が推し進められている。日本は、企業の技術力や情報通信インフラの整備・普及状況では世界の上位に位置する。しかしながら、デジタル化への対応状況に関する国際評価は、必ずしも高くない。「アナログをデジタルに変換するデジタイゼーション」にはある程度対応できているものの、「デジタルを経済や社会に浸透させ、新たな価値の創造や社会の変革を促すデジタライゼーション」では出遅れているとの評価である。

とりわけ、公的セクターのデジタル化の遅れが深刻である。非常時には、必要な人に必要な支援策を迅速に提供できる体制が不可欠で、デジタル化はそのための重要手段である。しかしながら、行政手続きの多くで依然として「対面・書面・押印」が基本とされており、マイナンバー制度も有効に活用できていない。このため、手続きが滞ったり、窓口が混乱するなどの事態が生じている。

わが国のデジタルガバメントの取り組みは20 年に及ぶ。2019 年にはデジタル手続法が成立し、「行政サービスの100%デジタル化」が目標とされた。しかしながら、各省庁におけるオンライン化率・オンライン完結率は低水準にとどまる。過去の大規模災害時には、情報のデジタルデータ化や行政手続きのオンライン化の必要性が強く認識された。しかし、事態が収束するにつれ取り組み姿勢が後退したことは否めず、過去の教訓を今回の非常事態に生かすことができていない。

海外に目を転じると、新型コロナ禍は政府に対し、デジタルサービスおよびデジタルID のニーズの増大や、新たなサービスの創出を促している。なかでも、エストニアやインドのように、平時においてデジタルガバメントが強力に推進され、実現している国や地域は、今回の新型コロナ禍においてこれを有効に活用できている。デジタル化は、困難な状況における行政機能の耐性や回復力(レジリエンス)に寄与していることがわかる。一方、アメリカはわが国と同様に、公的セクターのデジタル化が十分ではなく、経済的・社会的危機をさらに悪化させていると批判されている。
新型コロナ禍を受け、各国でデジタルガバメントへの取り組みが急がれるなか、世界的に注目されているのが、デジタル技術を活用して地域の課題解決に取り組むシビックテックや行政の効率化に取り組むガブテックと、政府・自治体の連携・協働の動きである。政府・自治体は、職員の専門知識や技術の不足はもとより、十分な人手や時間を割くことが困難な状況である。そこで、シビックテックやガブテックの力を借り、眼前の課題解決に取り組んでいる。わが国でも、シビックテック団体により東京都の感染症対策サイトがわずか1 週間で構築・公開された。

今回の新型コロナ危機で、従来の組織体制や業務プロセスのままでは、官民ともに機能不全に陥りかねないことが浮き彫りになった。一方で、デジタル技術やこれを熟知する専門家を有効に活用することで、非常事態下でも行政機能の維持や様々な対処方法の考案・実装が可能であることもわかってきた。わが国も、今回の経験や反省を踏まえ、デジタルガバメントの取り組み方法を抜本的に見直し、デジタル革新を着実に進めていかなければならない。

その際には、非常事態下におけるシビックテック、ガブテックとのオープンイノベーションの平時における継続、正確かつ適切な情報の収集・共有・公開に向けた①データ報告や情報収集プロセスの抜本的な見直し、②オープンデータのさらなる促進、③非常事態下におけるプライバシー保護の在り方の検討、ならびに、マイナンバー制度の有効活用、について、政府がリーダーシップをもって推進していくことが求められる。

・新型コロナ禍が促す公的セクターのデジタル革新(PDF:895KB)
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