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ポストコロナ時代のリスクマネジメント(中編)
確実性の高い未来の事象からリスク要因を特定する方法

2020年05月20日 粟田恵吾、坂本謙太郎、八幡晃久田中靖記


リスク要因洗い出しの実態

 リスクマネジメントのプロセスは、一般的に、①リスクの洗い出し、②リスクの評価・分析、③リスク対応という手順を経る。新型コロナウイルスという事態に直面し、「①リスクの洗い出し」が不十分だったのでないかという不安に駆られている読者、あるいは不安に駆られた上司に対応策の検討を指示されている読者も多かろう。

 実際のところビジネスの現場で「①リスク洗い出し」は、極めていい加減に行われている。例えば、投資決裁文書や有価証券報告書、M&Aのデューデリジェンス報告書を見返してみると良い。これらの書類には必ず「想定されるリスク」の記載があるはずだ。しかし、その欄に記入するために割かれている労力はいかほどのものだろうか。実際にこれらの書類を書いたことのある方は、ぜひ胸に手を当てて思い出してみていただきたい。

 とりあえず欄が埋まればいい、リスク要因を2~3点指摘でき、格好がつけば良しとしているケースがほとんどではないだろうか。その中に、その案件に特有のオリジナリティのあるリスク要因を一つくらい織り交ぜられれば「やった感」は十分に出る。

 受け取る側も同様だ。投資案件を審議・決裁する役員にせよ、有価証券報告書を見る投資家にせよ、記載されているリスク要因にはさしたる関心を示さない。案件オリジナルなリスク要因を一つくらい聞かされれば、「ほほう。よく考えてある」と感心する。こうして「お約束」のボケとツッコミに彩られた「リスク漫才」が繰り広げられているのが、多くの企業・組織での偽らざる実態だろう。
 本連載の前編で、リスクをFACT~FAITH~FEARの三つに分けて整理した。これらのうちどこまでを見ているかが問題なのだが、実際のところ、見る動作からして、どの程度行われているかは非常に怪しい。

未来事実/FACTの収集と解釈にまつわる問題

 「未来のことは分からない」というのは正しくない。2050年代に世界の人口は100億人に達し、その25%をアフリカが占め、イスラム教徒の数がキリスト教徒のそれに迫る。一方、日本の人口は1億人を切り、生産年齢人口は現状から4割近く減少。1都3県には高齢単身世帯があふれる。その手前、2030年には、世界のサーキュラーエコノミーの経済効果が4.5ドル、昆虫食市場は80億ドルに達し、食肉市場の60%は代替肉と培養肉で占められ、食材の3Dプリンティ
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