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ビューポイント No.2020-003

コロナショックをどう乗り切るか(2)-3つのフェーズの持久戦に備えよ

2020年04月10日 山田久


中国湖北省武漢市で最初の感染者が出てから約5カ月、世界の様相は一変した。新型コロナウイルスは南極大陸を除く地球上のほぼ全域に広がり、約100 年前のスペイン風邪以来の大規模なパンデミックをもたらした。当初は短期戦と思われていたウイルスとの闘いは、相当の時間を要する持久戦になる気配が出てきた。

世界各国で大規模な都市封鎖と社会的隔離政策が継続されれば、2~3カ月すればさしあたり感染拡大には歯止めがかかるとみることができる。しかし、その後はワクチンが開発されるまで、「もぐらたたき」のように都市封鎖や社会的隔離等の感染拡大抑制策があちこちで断続的に実施される、という状況となることが予想される。

ウイルス感染の短期封じ込めが難しく、少なくとも年内いっぱいはウイルスとの闘いを余儀なくされるとすれば、経済への打撃は甚大なものとなる。欧米諸国は4~6月期に記録的なマイナス成長となることはほぼ間違いなく、底入れが期待される中国の回復力も弱いものにとどまる見通しである。7~9月期には欧米諸国でも成長率はプラスに転じるであろうが、経済水準が早期に「コロナ前」に戻ることは困難とみられる。

企業の売り上げ水準は半年以上にわたって低下したままとなる可能性があり、その場合、赤字企業が続出することになり、失業率への上昇圧力はかかり続けることになる。この間、強い先行き不透明感が続くことから、家計の住宅や耐久消費財の購入意欲は減退し、企業も設備投資を減らすことになる。こうした事態に対し、各国は財政金融政策面で前例にとらわれない思い切った措置を講じており、さしあたり経済恐慌の発生を回避することは可能であろう。とはいえ、現状はせいぜい半年程度の経済の落ち込みを支えることが想定されているという印象であり、追加的な措置が求められることになる公算が大きい。

わが国経済への打撃も深刻なものとなることを想定する必要があろう。すでに航空産業やホテル・旅館、外食産業には甚大な影響が発生しているが、4~6月期に輸出関連産業を中心に製造業の業況は大幅に悪化し、雇用調整圧力が一段と強まる恐れが強い。その後、欧米経済が7~9月期にかろうじて底入れすれば、それに応じてわが国経済も悪化が止まるであろう。しかし、経済活動水準の回復力が弱いことで、年末になっても設備や雇用に対する下押し圧力が強く残ることを想定しておくべきだろう。

厳しい経済状況が続くことを覚悟する必要がある一方、重要なのはその間に、社会や経済の在り方が大きく変わっていくということである。つまり、ウイルス感染が鎮静化するまで身をかがめて受身的に待つのではなく、「コロナ後」の世界に想像力を働かせ、主体的・積極的にビジネスの在り方や生活様式を変えていくことが求められるのである。そうしたプロアクティブな行動こそが、先行き不透明感の強い状況で縮小均衡スパイラルが作動することを避けるのに極めて重要なポイントになる。「コロナ後」の世界は①「生活安全保障」「事業継続性確保(BCP)」を意識した国内生産体制の整備、②デジタル技術を活用した経済・社会活動の飛躍的増加、③生物多様性を意識した地球環境問題への取り組み強化、といった方向性が明確化することが予想される。そうしたことで、グローバル・サプライチェーンや販売チャネルに構造変化が生じる。また、「コロナ後」は債務返済のために各経済主体は前向きの支出が抑えられることになり、グローバル経済のトレンド成長率は低下するだろう。雇用維持のために採られる様々な大規模な政策の副作用として、古い産業構造・事業構造が残ったままとまれば、収益を生まない産業・事業の存在が潜在成長率を下押しすることにもなる。世界の経済成長率が鈍化すれば輸出の伸びも抑えられ、国内回帰の動きも加わって、貿易量が鈍化する。加えて、国際的な人の移動も当面は抑制され、各国でインバウンド需要の回復も緩やかにとどまるだろう。結果として、外需依存の成長は難しくなり、いかに内需主導成長を実現していくことが大きな課題になる。

以上の認識に基づけば、政府は持久戦を想定しつつ、今回を奇貨として経済社会を変革することを展望して、3つのフェーズに分けて対応策を講じるべきである。第1段階は「感染拡大阻止」フェーズである。感染の加速度的な増加トレンドを抑え込むことが最優先課題であり、そのためには実効性のある形で人々の行動制限を行う必要がある。緊急経済対策は当面の措置として様々に有効なメニューが盛り込まれたものの、緊急事態宣言のもとでの移動制限の実効性を高めるためには、実質的な休業補償とセットの形での事業者への休業要請がポイントになる。

第2段階は「感染収束と経済回復の両立」フェーズである。感染拡大に歯止めが掛かった後も、想定を上回る期間、経済活動水準の低位推移が続く可能性があり、資金繰り支援・雇用維持策・所得補償策は追加で求められることを想定しておく必要がある。その場合に備え、十分な規模の「緊急安定化基金」を早期に創設すべきである。さらに、感染拡大の歯止めが明確化したのちに経済活動を再開させるにあたり、感染収束と両立させるための環境整備を行い、加えて、“コロナ後”を見据えた経済・社会構造の変革を進める支援策も必要である。そのための指針作りとして、有識者を集めた「“コロナ後”の経済社会に向けた中長期ビジョン(仮称)」の策定作業を開始し、それと並行させ、EC事業参入、リモートワーク推進、製造拠点見直し、遠隔医療・遠隔教育推進、5G・6G活用等、先取りできる構造対策を前倒しで実施する。

第3段階は「“コロナ後”の経済復興」のフェーズである。「中長期ビジョン」に沿った復興の取り組みを本格化させる一方、ウイルスとの戦いが長引けば「後始末」も必要になる。その場合、累増した国家債務や膨張した中央銀行のバランス・シートをいかにして正常化していくかが問われることになり、同時に、産業構造を新しい形に転換していくのに、いかに失業を回避して労働移動を進め、内需主導成長を支える賃上げのできる経済体質に転換するのかも問われる。こうした展望を念頭に置きつつも、現時点では不確実性が余りにも高いことから、まずは第1 フェーズを早期に終息させることに注力しつつ、第2フェーズへの準備を着実に進めることが、いま我々がなすべきことである。

コロナショックをどう乗り切るか(2)-3つのフェーズの持久戦に備えよ(PDF:655KB)
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