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居宅(介護予防)サービス計画に位置付けたサービス内容の実態に関する調査研究事業

2020年04月10日 福田隆士齊木大石田遥太郎


*本事業は、令和元年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.本調査研究事業の背景
 居宅(介護予防)サービス計画(ケアプラン)は、ケアマネジャーがインテーク面談結果や、利用者の希望および利用者の状態・生活環境等のアセスメント結果に基づき、家族の希望、地域におけるサービス提供体制等を勘案して、課題解消に最も適切なサービスの組み合わせを検討したうえで、利用者および家族の意向、総合的な援助方針、解消すべき課題、サービス提供等を踏まえた目標と達成を目指す時期、サービスの種類・内容・利用料、提供上の留意点等を整理するものである。対象となる方の状態や健康上の問題点に加え、生活環境・生活上の課題、家族・介護者の状況を理解し、本人および家族の意思に沿う内容とすることが求められる。
 平成30年度介護報酬改定に関する審議報告において指摘されているように、公正中立であり、かつ質的な担保が期待されるものである。つまり、ケアプランの客観的な合理性・妥当性・適切性が担保できていることを明確にしていくことが必要である。
 近年、ケアマネジャーの従事者数は増加傾向にあり、中長期的にケアプラン・ケアマネジメントの質および公正中立性の担保を図るためにも、これらの差異要因の整理、対応の方向性の検討を行うことは重要である。
 客観的な合理性や妥当性が担保でき、かつ利用者本位のケアプランを実現していくためには、以下のような点が課題になると考える。
・事業所やケアマネジャーによるケアプラン内容の相違にかかる実態および差が生じる要因の把握
・利用者・家族にとってのケアプランの作成過程や内容の妥当性等を確認するための指標・ポイントの検討
・利用者・利用者家族の意思決定に役立つ情報・指標の検討、情報提供の在り方の検討

2.本調査研究事業の概要
 本調査研究では、以上の背景および課題認識に基づき、ケアマネジャーの作成しているケアプランが、利用者の心身の状況や置かれている環境に応じて、利用者の意向・選択に基づき、適切な保健医療・福祉サービスについて多様な選択肢から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮されているか、居宅介護支援事業所で実施されている取り組み、施策を把握したうえで、利用者や家族が意思決定するうえで必要となる情報の項目やその内容、提供方法等について検討、整理することを目的として実施した。
 そのために、検討委員会を設置し、その中で居宅介護支援事業所・ケアマネジャーの取り組みや基本的考え方等の調査、利用者や家族のニーズ把握、サービスの適切性を検討するための指標の検討、利用者・家族にとって有用な情報・指標の検討等を実施した。
(1)検討委員会の設置・運営
 本調査研究における各種検討を円滑かつ効果的なものとするため、ケアマネジメントや介護における質の検討等に精通した有識者や実務者等からなる検討委員会を設置・運営した。検討委員会は、調査研究の方向性、実施手法・進め方、各種検討における視点・要点、分析・検討内容、今後の提言検討・とりまとめ等、調査研究全般に関する内容を検討、助言を得る場とし、計4回開催した。
(2)先行研究等の調査・整理
 各種議論の検討材料を整備するために、過去に行われたケアプランやケアマネジメント、サービスの品質評価等に関する先行研究等の文献や公開情報の調査を実施し、ケアプランに位置付けられるサービスの実態を把握・整理した。
(3)居宅介護支援サービスにおける実態把握
 (2)先行研究等の調査・整理に加え、ケアプランに位置付けられるサービスの実情、差異要因に関する仮説を得るために居宅介護支援事業所のケアマネジャーや有識者に対するヒアリング調査を実施した。居宅介護支援事業所によるサービス選定の傾向の有無や想定される差異要因についての意見を収集し、整理した。
(4)利用者・家族のニーズ把握
 ケアプランに位置付けられるサービスへの選択に関する情報項目や公開方法について、利用者や家族がどのようなニーズ・意向を有しているかについて調査し、整理を行った。
(5)利用者・家族の意思決定に資する情報にかかる検討
 上記(2)~(4)での調査・検討内容等を踏まえ、利用者や家族の意思決定に資する情報項目・内容の検討を実施した。
(6)情報公開方法、情報公開項目にかかる検討
(2)~(5)までの調査、検討を踏まえ、情報提供のチャネル等に関する検討を実施した。

3.居宅介護支援サービスにおける実態調査
 利用者および家族が居宅介護支援サービスを選択する際に重要視する情報は、そのサービス品質に関連する項目であると考えられる。それを踏まえ、調査の進め方としては、当事者であるケアマネジャーにヒアリングを行ったうえで、ケアマネジャーに求められる要素や居宅介護支援サービスにおいて重要視するプロセスを把握し、居宅介護支援サービスを選択する際、重要視する情報の仮説を設定することとする。
 その仮説を基に利用者向けのアンケート調査およびヒアリング調査を実施し、開示する情報項目とその開示方法を検討することとする。

4.調査結果・考察
 本調査研究において実施した利用者および家族向けアンケート調査は、対象者が限定されている面があり、一定のバイアスが生じているものと考えているが、「ケアマネジャーに求める要素」や「ケアマネジメントにおいて重要視するプロセス」、「居宅介護支援サービスを選択する際に重要視する情報」において、一定の方向性、示唆を導くことはできた。
 利用者・家族が居宅宅介護支援事業所・ケアマネジャーを選択する際に重要視する情報としては、その属性等によって多少の差はあるものの、居宅介護支援事業所の基本情報に加え、「居宅介護支援サービスを効率化できる仕組みや体制の有無」、「従業員の教育制度の有無 業務標準化施策の有無」、「ケアマネジメントプロセスの管理体制有無」といったサービスプロセスの質に関係する情報を参考にしたいという示唆が得られた(ただし、個人属性等によって参照したい部分は異なる面もあることには留意を要する)。
 一方、利用者向けに実施したヒアリング調査においては、居宅介護支援事業所の利用期間や要介護度、医療・介護にかかる知識の有無等によって求める情報に差が生じる可能性が示唆された。
 また、すでに公表されている情報も含めて重要視するという意見がみられており、既存の情報に加えて必要と想定される情報項目は「事業所の体制・仕組み」が想定される。
 その中で具体的に情報提供が有効と想定されるものとしてはケアプランのダブルチェック体制があるか、それが実施可能な人員体制となっているか、等が挙げられる。
 現状、居宅介護支援事業所の情報を得られるチャネルとしては、介護サービス情報公表システムや市町村・地域包括支援センターからの情報等が想定される、各チャネルでの情報提供について利用者の自己選択、利用者の満足、納得に資するような項目の検討と合わせて考えて行くことが必要であろう。
 ただし、現状、利用者や家族が介護サービス情報公表システムを閲覧するケースは限定的である。「事業所の体制・仕組み」以外の情報も含めて利用者や家族がより負担なく確認でき、かつ有用な情報が得られるように、情報公表システムの一般利用者の利用拡大、他のチャネルでの情報発信等も合わせて検討していくことが必要である。

5.今後の課題
 今回、居宅介護支援事業所や利用者・家族等向けの各種調査を実施したが、対象が限定されていること、一定の偏りがあると想定されることから、継続した調査・検討により、より詳細な実態・ニーズ等の把握を踏まえ、必要な情報項目の精査、適切なチャネルの検討を行うことが求められる。利用者がはじめにケアマネジメントについて認識する経路としては、地域包括支援センターや病院の退院時調整におけるソーシャルワーカー等が多いと考えられる。この段階から、ケアマネジメント・ケアマネジャーについて適切な情報提供がなされることも重要であるといえる。利用者それぞれの置かれている環境や認知機能の状態にも配慮した、情報提供のあり方を模索する必要がある。
 したがって、地域包括支援センターや病院のソーシャルワーカーに対して、居宅介護支援事業所の情報をどのように取得し、どのように評価し、どのような基準で利用者および家族に対して紹介しているか等を把握していくことが重要であろう。

※詳細につきましては、下記の報告書をご参照ください。
【報告書本編】
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