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地域公共交通と自動運転サービス/子供の送迎を含む移動の視点から

2020年02月10日 泰平苑子


 国土交通省が実施した平成27年全国都市交通特性調査の集計結果を確認してみて、子供がいる世帯の30代(30~39歳)女性の目的別移動回数(平日)は「通勤・通学」や「買い物」を超えて「送迎」目的が多いことが改めて分かった。
 特に子供の送迎が多いことが容易に想像されるが、同時に、移動課題も多くあるのではと感じた。例えば、いつもは幼児用座席を設置した自転車でお子さんを保育園や幼稚園へ送り迎えしている保護者は、雨など悪天候の際はどのように送迎しているのだろう。また、お子さんの塾や習い事のため、保護者がマイカーで送り迎えしたいとしても、仕事、炊事、さらに小さい妹や弟の存在といった制約で送迎が難しく、子供の塾や習い事を諦めたという方もいるのだろう。
 交通課題の面から見ると、送迎は乗降のための一時的な駐停車が伴うが、自家用車両の駐車場や乗降できる場所がない際の路上の駐停車は、周辺交通の妨げになり、道路混雑の原因につながる可能性もある。幼稚園や保育園など施設によっては車での送迎が基本的に禁止されている所もある。

 私は、日頃、先端技術を用いて社会課題を解決する新事業の提案に従事している。足元では、身体の衰えや免許返納により移動手段の確保が難しい高齢者を対象に、交通不便地域や交通空白地域など公共交通機関が十分に運行されていない地域で、区域運行をはじめとするデマンド交通(予約や呼び出しに応じて目的地に輸送する交通)や、無人走行を行う自動運転車両の社会実装を進めている。子供の送迎に関心を持った契機は、日本総研が主催する「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」の自動運転車両を用いたデマンド交通の実証実験(神戸市)を通じてだった。実証場所は急速な高齢化が進む郊外ニュータウンで、自家用車がなければ買い物など日常の外出が困難と感じる住民が増えている地域だ。

 実証実験を行ううちに子供さんの登録・利用が増えたことが分かった。それは移動サービスの主な対象である高齢の住民が訪れるニュータウンの自治会館は、子供たちの習い事の教室でもあったからだ。自治会館に自動運転車両が到着し、乗り降りする高齢者を見て、保護者が自分の子供の習い事の送迎に使い始めた。デマンド交通はアプリで予約・呼び出しができ、車両の場所もバスロケーションシステムで分かるため、保護者は子供の送迎の様子を家から確認することもできた。さらに乳幼児を抱える保護者から、自治会館の隣にあるスーパーでの買い物のため、移動サービスを使いたいとの希望も頂いた。そこで我々も車両にチャイルドシートを設置し、6歳未満の幼児も乗車できるようにした。

 子供がいる世帯の送迎や買い物といった日常での移動需要は、我々の実証実験からだけでなく、冒頭で紹介した国の調査からも一定数あることが確認できた。とはいえ事業採算性が難しいと言われるのが生活圏でのラストマイル交通(駅やバス停から自宅等の目的地までや、生活圏で利用する短距離用の交通手段)だ。これに対して我々は、無人の自動運転車両を導入することで事業採算性の課題をクリアすることの可能性を追求している。自動運転車両の導入に伴う安全性も十分に考慮しながら運行形態を構築し、近い将来に子供さんと保護者の方が、便利で安心して乗ってもらえるラストマイル交通を目指したいと思う。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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