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リサーチ・フォーカス No.2019-034

アジア自動車需要の短期・長期展望― 所得増と人口増を背景に市場規模は今後30 年で3 倍に ―

2020年01月24日 野木森稔


アジア自動車市場は長年にわたる堅調な成長が一転、2018、2019 年は販売台数が連続して前年比マイナスになった模様である。しかし、これは構造的な下落局面入りではなく、金融環境悪化を主因とした一時的な下落局面だった可能性が高い。実際、アジア各国・地域で2019 年に利下げが実施されて金融環境が改善するとともに、多く国で足元の販売状況は好転している。

さらに、長期で見た自動車市場の拡大基調は崩れていないと考えられる。今後、アジア全体として、所得水準上昇と人口増加を背景に自動車需要は増加を続けると予想される。アジアでは自動車普及が加速する節目となる一人当たりGDP「5,000 ドルの壁」を超えていく国が増えることが大きな後押しとなる。

現状、アジアの自動車保有率はかなり低く、今後の市場拡大余地は大きい。一方で、アジア特有の二輪車利用の定着、都市部の高い人口密度に加え、近年のカーシェアなどの新たな動きが自動車保有拡大の抑制要因となりうる。所得増、人口増に保有率の上昇ペース加速に加え、これらを勘案して一定の前提の下で推計したが、それでも今後30 年でアジアの自動車市場は現在の3 倍程度まで拡大すると試算された。2030 年までは中国の市場拡大が目立つ形となり、その後はインドやASEAN が拡大ペースを速める。とりわけインドは2050 年には現在の10 倍以上の規模となり、年間販売5,000 万台が視野に入ってくる。

アジア自動車市場は、今後も金融面の弱さなどを背景に、しばしば不安定化することが懸念される。しかし、そうした中でも所得、人口といったファンダメンタルズに基づく成長が期待できるため、積極的な市場獲得に力を入れていく必要がある。アジアでは市場拡大のなか、環境対策を背景に自動車の買い替えを促す動きが続くため、技術面で優位な日本の自動車企業にとって好機となる。

アジア自動車需要の短期・長期展望― 所得増と人口増を背景に市場規模は今後30 年で3 倍に ―(PDF:1,010KB)
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