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JRIレビュー Vol.1, No.73

世界経済見通し

2019年12月24日 石川智久


2019年の世界経済は前年比3.0%と、2018年の同3.6%から大幅に減速した模様である。これは過去の例に照らせば、世界的な景気後退の一歩手前と言える低い伸びである。米中貿易戦争を背景に先行き不透明感が高まり、貿易・投資活動にブレーキが掛かったことが主因と考えられる。ただし、足許では底入れの兆しがみられる。

2019年央にかけて、世界的に低迷する製造業と、堅調な非製造業といった二極化の様相を呈していたが、ここに来て製造業に下げ止まりの兆しがみられる。米中貿易戦争が大統領選を前に一時休戦に向かいつつあるほか、各国での良好な雇用環境を背景に主要国の内需も底堅いことから、さらなる減速のリスクは小さくなりつつある。

製造業不振の大きな要因であった半導体需要も足許で底打ちの兆候がみられる。半導体関連の投資予測によると、急激な回復は見込みがたいものの、多くの企業でAIやIoT等への関心が強いため、緩やかながらも増加していく公算が大きい。

金融環境をみると、2019年中に各国中央銀行が金融緩和姿勢に転じている。今後は、既往の金融緩和効果が顕在化し、景気を下支えする可能性が高い。財政についても、ペースは限定的ながら総じて拡大方向となる見込みである。

以上を総合すると、世界景気は緩やかに持ち直していく見通しである。ただし、米中覇権争いは今後も続くと見られるなか、設備投資をはじめとする企業のリスクテイクは活発になりにくく、力強いけん引役が不在の状況が長引くとみる。世界経済の実質成長率は2020年、2021年ともに3.4%と、2019年の3.0%からは回復するものの、1980年以降の平均程度の水準にとどまると予測している。

リスク要因としては、米中対立に加えて、世界的にマイナス金利建ての債券が多く発行されるなか、債券バブルの芽がみられることに注意が必要である。また、中国では幅広い分野で過剰債務問題が残存している。新興国ではトルコ・アルゼンチン等の外貨準備が少ない国の通貨・金融面の脆弱性に引き続き注意が必要である。
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