アメリカ経済は、米中貿易摩擦が激化するなかでも堅調さを維持。失業率が3%台まで低下するなか、賃金上昇率は3%程度まで上昇。他方、物価は伸び悩み。インフレ率はFRBの2%目標を下回る状況が持続。
こうした好調な景気と低インフレが併存する背景として、アメリカのエコノミストは、生産性の向上、グローバル化、原油価格の下落、顧客の囲い込み、オンライン・ショッピングの普及がインフレ圧力を減じる「アマゾン効果」といった仮説を提示。これらの仮説について主にマクロデータに基づいて検証すると、アマゾン効果以外は妥当性が低いという結果。
アマゾンは商品を総じて既存小売店よりも割安に提供しているため、アマゾン経由の購入拡大に伴い消費者のインフレ予想が低下。この結果、インフレ率も下振れ。一定の前提条件の下にアマゾン効果を試算すると、2016年以降のインフレ率を年平均▲0.1%ポイント下押し。
こうしたアマゾン効果は、短期的には景気の押し上げに寄与。その理由は、予想インフレ率の低下以上にFRBが利下げする結果、実質金利が低下するため。他方、中長期的には金融政策の有効性が失われるリスク。実質中立金利が低下するなか、予想インフレ率も低下すれば、景気後退時の金融緩和余地が実質的に縮小。今後、日本と同様、流動性の罠に陥る懸念も。
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JRIレビュー2019 Vol.11,No.72
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