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リサーチ・レポート No.2019-014

【米国経済見通し】米中対立の緩和で安定化に向かう米国経済~米中貿易戦争の再燃とバブル形成がリスク~

2019年12月03日 井上肇松田健太郎、橘高史尚


米国経済の成長ペースは2018年央をピークに減速しているものの、これまで景気拡大が持続。企業部門が景気の足を引っ張る一方で、家計部門が下支え。この結果、今回の景気拡大局面は19年7月から戦後最長に。今後の展開は、トランプ政権・議会の政策運営と、FRBの金融政策運営が大きく左右。

まず、通商政策についてみると、トランプ政権は18年から強硬な対中政策を続けてきたものの、20年11月の大統領選挙までは姿勢を軟化させる見通し。再選を目指すトランプ大統領は、中国との貿易戦争の激化が景気悪化や株安を招き、支持率の低下を招く事態を回避する方向へ。そのため、製造業を中心とする企業部門の弱さが雇用削減などを通じて家計部門に波及する事態には至らない見込み。

次に、財政政策に目を向けると、19年夏に超党派予算法が成立したことで、当面は財政支出の拡大が可能となり、景気を下支えする見込み。ただし、党派対立の激化や財政状況の悪化などにより、大規模な景気刺激策は見込み薄。

最後に、金融政策についてみると、FRBによる予防的な利下げの効果が今後徐々に顕在化。景気失速が回避されるため、さらなる利下げは実施されないと予想。一方で、インフレ期待の低迷や貿易戦争再燃による景気下振れリスクの残存などから、利上げ再開には高いハードル。FRBは物価上振れよりも景気下振れの防止に重点を置いた政策運営を続ける公算大。

以上を踏まえ、景気の先行きを展望すると、トランプ大統領が景気に配慮した政策運営を行うと予想されるほか、緩和的な金融環境が景気を下支えすることで、20年後半にかけて成長ペースは小幅ながら持ち直しへ。ただし、米中覇権争いの長期化が予想されるため、景気の力強い拡大は見込み薄。結果として、予測期間を通じて成長ペースは2%程度とみられる潜在成長率並みにとどまる見通し。

以上のメインシナリオに対して、米中貿易戦争の展開次第で上下双方向に振れるリスク。また、緩和的な金融環境は、短期的には景気下振れリスクを抑制するものの、各種マーケットにおけるリスクテイクの動きを促すことで金融市場でのバブルを形成する恐れがあり、中期的には景気下振れ要因に。

【米国経済見通し】米中対立の緩和で安定化に向かう米国経済~米中貿易戦争の再燃とバブル形成がリスク~(PDF:723KB)
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