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JRIレビュー Vol.10,No.71

【特集 外国人材の望ましい受け入れに向けて】
7章 ドイツ・スウェーデンの外国人材政策-熟練労働者を市民として受け入れる

2019年11月28日 山田久


1.ドイツは今や、世界でも有数の外国人受け入れ大国であり、主要先進国ではアメリカに次いで2番目に外国人の流入が多い状況にある。一方、スウェーデンの外国人受け入れは絶対数ではさほど多くないが、人口比でいえば、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアといった代表的な移民国家を大きく上回る。労働市場への統合という点では、自国生まれ・外国生まれ間の失業率格差からみる限り、スウェーデンには課題が残り、ドイツは比較的うまくいっている。

2.ドイツ・スウェーデンともに、一定のスキルのある外国人労働者は積極的に定住を促し、市民として受け入れていこうという国の方針が窺われる。非EU諸国からの外国人労働者受け入れについて、両国ともにかつて導入されていた労働市場テストを原則廃止し、一定年数国内で就労を継続すれば、無期限滞在が認められる仕組みを整備してきている。

3.ドイツにおける「EUブルーカード」レベルには達しないEU以外からの外国人材は、技能レベルでいえば、わが国で今回創設された「特定技能」にほぼ相当すると考えられる。滞在許可や家族帯同の条件を比較すると、外国人労働者を同時に市民として受け入れようというスタンスを明確にしているのに対し、わが国では基本的には外国人労働者は一時的な労働者であり、市民としての受け入れには後ろ向きといえる。もっとも、かつてのドイツも「移民」へのアレルギーが強く、外国人労働者はあくまで一時滞在を建前とする制度を構築していた。しかし、2000年代半ば、移民の受け入れを正面から認め、制度整備を行って今日に至っているという経緯がある。

4.ドイツでは、外国人材の受け入れが進むにつれ、「デ・ファクト」としての移民社会への接近が進み、後追い的に制度も整備されることになった。今後、わが国で外国人が増えていくことはほぼ間違いなく、現状2%程度である外国人比率は、2030年には5~6%に達することが見込まれる。移民という言葉を使うかどうかは別として、熟練労働者を日本人と同じ重要な人材として捉え、長く日本で定住することを前提に市民として受け入れる制度を整備していくことが望まれよう。加えて、留学生を有望な人材として捉え、現在悪用が問題化している留学生(資格外活動)制度の適正化を進め、有能な人材確保につなげる視点を改めて再確認するべきである。

5.「統合政策」「共生政策」という観点から、ドイツ、スウェーデンの移民受け入れ政策からプラス・マイナス両面で学ぶところは多い。第1に、外国人受け入れのペースのコントロールである。スウェーデンで極右政党が躍進し、移民排斥の声が高まった背景には、あまりにも急激に大量の移民・難民を受け入れたことの影響が大きい。第2は、外国人の就労・居住地域の適切な配分である。外国人が無秩序に偏在することで「セグリゲーション(居住分離)」の問題が発生するリスクを回避することが重要である。第3に、経営者団体、労働組合、NPOなど、様々な民間レベルでの草の根の取り組みと自治体の支援である。早くから日系人が多く住み試行錯誤を経て草の根で共生政策を成功させている先例を共有し、活動のハブとなるべき自治体が草の根の取り組みを広げていくことが重要と言えよう。
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