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【ヘルスケア】
シニアの「始めたこと・やめたこと」

2019年11月26日 岡元真希子


 はや、師走の声が聞こえてきますが、今年の流行語大賞にノミネートされた言葉の一つに「免許返納」がありました。便利な生活の足である自家用車を手放したくない気持ちがある一方で、認知機能が低下した高齢者による自動車事故のニュースは、高齢者の免許自主返納を後押ししています。2018年に運転免許を返納した高齢者は約40万人とみられ、2009年に比べて8倍以上に増えています(警察庁『運転免許統計 平成30年度版』)。

 加齢に伴って心身機能が低下することは、何かをやめたり、何か新しいことを始めたりするきっかけにもなります。例えば、運転免許返納の次に、自転車に乗ることもやめるという話も聞きます。体力が低下して漕ぐのが困難になったり、よろけて不安を感じたりしたことが自転車をやめるきっかけになるようです。止めるという決断は、生活を見直すなどの変化のきっかけにもなります。自転車を手放したのを機に「お医者さんにも言われているし、もっと歩く生活をしたい」と前向きにとらえるシニアの声も耳にします。ある女性は折り畳み式のリュックサックを常に持ち、買い物した荷物などを器用にリュックに収めて、両手を空けて歩いておられました。自家用車でまとめ買いをしていたものが、自転車のカゴに収まる量になり、リュックサックに収まるようになる、というように、上手に変化に適応されているのかなと拝見しました。

 心身機能だけでなく、嗜好も変わってくるという面もあります。70代後半の女性は「電車で日本橋のデパートまで買い物に行くのは、人混みも嫌なのでもうやめたの。通販で買ったら送料はかかるが、往復の交通費と同じぐらいだし。良いものはやっぱり良い、とは思うけど、この年になると、そんなにモノがほしいと思わなくなった」とおっしゃっていました。

 70代になってから新しいことを始めるシニアも少なくありません。認知症予防のために折り紙や塗り絵を始めたり、孫とのコミュニケーションのためにスマホを始めたりするなど、積極的な方にも多くお目にかかります。介護施設などを訪問して楽器を披露したり、習字を教えたりといったボランティア活動を70代になってから始める方もいらっしゃいます。

 年の瀬に、シニアとお話をしていると、「もう面倒だから年賀状をやめた」というお話もよく耳にします。一方で、年賀状を送るのをやめて、代わりに電話をするようにした、という方にお会いしたことがあります。多くの方に形式的な年賀状を送るよりも、少数でも大切な方の声を聴いてお話しすることで、相手の安否を気遣い、自分が元気であることも伝えておられるのでしょう。

 若い頃のやり方に固執しすぎず、新しいやり方・新しいことにチャレンジするしなやかさが、高齢期を上手に生き抜くコツなのかな、と感じました。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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