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リサーチ・フォーカス No.2019-027

不透明感が強まる香港経済の展望―失われるビジネス拠点の優位性と維持される国際金融機能―

2019年10月30日 野木森稔


香港では、デモ・抗議活動と米中貿易戦争の余波という二つの逆風に晒されている。こうしたなか、香港経済の先行きに対して悲観論が大きくなりつつある。そこで本稿では、①景気面、②貿易などのビジネスセンターとしての役割、③国際金融センターとしての機能、の3点から今後の香港経済を展望した。

まず、景気面では、貿易取引、小売売上、不動産市場の低迷により、景気後退入りの可能性が高い。また、政情不安定化や企業の脱香港の動きにより、中長期の成長率も大きく低下すると予想される。

次に、国際ビジネスセンターとしての優位性は、シンガポールなどに対して著しく低下すると見込まれる。デモ、米中貿易戦争が長期化するなかでは、サプライチェーン再編の動きなども絡み、貿易・卸売関連企業に加え、本社機能や地域統括機能の流出は避けられない。

一方、国際金融センターとしての機能は維持されるとみる。香港は、中国本土と海外を結ぶ国際仲介機能という独自の優位性を持つ。中国本土における国際金融機能が十分でないため、直ちに香港の代替機能を見つけるのは難しい。中国当局は今後も香港をグローバルな金融アクセスの窓口として利用していくとみられる。

日本企業は、香港の潜在成長力の低下や、ビジネスセンターとしての地位低下を踏まえ、香港でのビジネス展開を慎重に再検討することが求められよう。一方、中国金融市場の窓口としての機能は引き続き活用していく必要がある。

不透明感が強まる香港経済の展望―失われるビジネス拠点の優位性と維持される国際金融機能―(PDF:774KB)
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