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リサーチ・フォーカス No.2019-026

2020年の大統領選にかけての米国景気シナリオ―トランプ大統領は再選への正念場に―

2019年10月23日 井上肇


来年の米大統領選に向けた動きが本格化しつつある。本来であれば、足許の良好な雇用環境がトランプ大統領再選の追い風になるところである。しかし、景気が減速するなか、逆風も強まりつつあり、必ずしもトランプ大統領が有利とは言えない状況にある。トランプ大統領再選のカギを握る景気の行方は、大統領選挙への影響を意識した政権・連邦議会の政策運営と、FRBの金融政策運営に大きく左右される。

まず、通商政策についてみると、中国との貿易戦争は今後も「緊張と緩和」が繰り返される公算が大きい。再選を目指すトランプ大統領としては、対中強硬姿勢を支持するコアな支持層を繋ぎ止めつつ、景気にも配慮して無党派層の取り込みを図っていく、という両睨みの必要があるためである。

次に、財政政策に目を向けると、超党派の財政合意が成立したことで、2021 年にかけて財政支出の拡大が可能となり、景気を下支えすると見込まれる。ただし、党派対立が激化するなか、本予算が成立せず、再び政府機関が閉鎖される可能性が残ることに加え、仮に景気が下振れた場合でも、財政面からの追加の景気刺激策の実現は容易ではない。

最後に、金融政策についてみると、景気下振れリスクが残るなかで、FRBが景気の調整役を果たすと予想される。FRBの金融緩和姿勢が、資産効果や家計・企業の資金調達環境の改善などを通じて景気を下支えすることになるだろう。

以上を踏まえ、先行きを展望すると、トランプ大統領は基本的には景気へのマイナス影響を度外視してまで中国との貿易戦争に傾注することはできないとみられ、財政拡大や金融緩和が下支えすることで、景気失速は回避されると見込まれる。しかしながら、貿易戦争を巡る不透明感は払拭されないため、景気が明確に上向くことも見通しにくい。こうした「まだら模様」の景気展開が予想される下で、トランプ大統領は再選への正念場を迎えよう。

2020年の大統領選にかけての米国景気シナリオ―トランプ大統領は再選への正念場に―(PDF:566KB)
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