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「スマート農業」から「農村デジタルトランスフォーメーション」へ

2019年02月14日 三輪泰史


 2018年度も残りわずかとなってきた。2018年度は農業にとってはまさに「スマート農業元年」であった。大手農機メーカー各社から自動運転農機が発表され、各地の農地ではモニタリング用や作業用の農業ドローンが飛び始めた。また、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では農業データ連携基盤(通称:WAGRI)のプロトタイプが構築され、4月からの本格運用を控えている。スマート農業技術の第一世代がついに出揃ったと言えよう。

 まさに百花繚乱なスマート農業技術であるが、実は国が当初描いた技術開発ロードマップよりも1、2年前倒しで実用化に至ったものが少なくない。日本の研究機関や企業の優れた研究発力とたゆまぬ努力の賜物だろう。世界のスマート農業分野の技術開発は日米欧の三つ巴状態であるが、その中で(世界基準での)中小規模農地向けのスマート農業技術では日本は頭一つ抜け出せたと考える。

 続々と実用化されるスマート農業技術をいかに農村に実装していくかが、次の重要なテーマとなる。その際に欠かせないのが、「スマート農業で地域全体を元気にする」という視点だ。農業就業人口が今後さらに減少し、労働力不足が深刻化するわが国では、スマート農業技術を汎用性のある技術として広く普及させられるかが死活問題である。なぜなら、スマート農業のような先進技術は、普及のための明確な戦略とアクションが無ければ、新しもの好きで資金力に余裕がある一部の者(マーケティング理論では「イノベーター」と呼ばれる)にしか浸透しない、というリスクを孕んでいるからである。

 スマート農業を老若男女、営農規模を問わず広く普及させるためには、スマート農業技術の地域ぐるみでの効率的な利用方法の確立がポイントとなろう。まず、スマート農業技術の導入において、従来型の農機のような「一家に一台」という観念を払拭することが必要だ。効率性が極めて高い自動運転農機やドローンは、複数の農業者でシェアしてこそ、その真価を発揮する。スマート農機シェアリングサービスや、JAや地元企業による作業やモニタリングのアウトソーシングサービス、といったモデル作りが求められる。

 また、スマート農業技術を使うには、農村地域における高速通信網や電力等のインフラ整備が欠かせない。通信等のインフラ整備は、単にスマート農業を支えるだけでなく、農村の住民生活や産業活動にも大いに役立つ。今後のスマート農業の普及においては、農業者レベルでのスマート農業技術の導入施策だけでなく、スマート農業を機とした「農村全体のデジタル化戦略」が重要となるのである。IoTを活用した「儲かる農業」と「不便なく暮らせる農村」の両立が、農業分野におけるこれから5年の注力すべきテーマと考える。
 
<ご案内> 
日本総合研究所では本コラムの観点から、3月18日に「スマート農業が興す"農村デジタルトランスフォーメーション"」と題して、デジタル化時代の農業と農村地域の新たな姿を提言するシンポジウムを開催いたします。ぜひご参加ください。

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 株式会社日本総合研究所 50周年記念 「次世代の国づくり」シンポジウム 第三弾
 スマート農業が興す ”農村デジタルトランスフォーメーション”


 日時:2019年3月18日(月) 14:00~17:00
 会場:日本橋三井ホール COREDO室町1  5階 (エントランス4階)
 参加費無料
 
 お申込みはこちらから


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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