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妊産婦の食生活向上に向けた自治体の課題

2018年05月08日 小島明子


 「『健やか親子21』(第2次)推進検討会報告書」(厚生労働省)では、若い女性を中心に、食事の偏りや低体重(やせ)の者の割合が増加するなど健康上の問題が指摘されています。女性自身の健康はもちろんのこと、将来、産み育てることになるかもしれない子どもの健康への配慮のために、若い女性が日頃から健康的な食生活に対する意識を高めることが必要です。
 厚生労働省平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「妊産婦等への食育推進に関する調査」(以下「厚生労働省の調査」)では、妊娠期・授乳期に若い女性の食生活への関心が高まりやすいことに着目し、妊産婦の食生活向上に向けた課題を把握するための調査を行いました。本稿ではその結果から得られた妊産婦の食生活向上に向けた自治体の課題について述べます。

 「厚生労働省の調査」で、自治体が妊産婦の食生活向上に向けたウェブや広報誌等を通じた情報提供を行っているかを調べたところ、「自治体ホームページ」でこうしたコンテンツがある割合は、妊婦向けでは50.7%、産婦向けでは40.2%でした。
 一方、「自治体の公式ホームページ」や「自治体の広報誌」から「食生活に関する情報を得た」割合は、妊婦・産婦ともに1割以下であり、食に関する情報収集源としてはあまり活用されていないことが明らかになっています。食に関する情報収集源としては、妊婦・産婦ともに「医療機関の医師・看護師・助産師・栄養士」、「情報ポータルサイト(例:こそだてハック、mamari、等)」、「妊娠子育てアプリ(スマートフォン)」などが利用されています。

 しかし、相対のコミュニケーションにおいては自治体が果たす役割について、異なる結果が得られています。自治体が主催する「母親学級・両親学級」に参加した人のうち、そこで食生活に関する情報提供を受けただけではなく、自主的に相談をした割合は、24.5%に上ります。この割合は決して高いとはいえませんが、「母親学級・両親学級」に参加し、食に関する情報取得・相談をした人の約8割から9割が、「役に立った」「どちらかといえば役に立った」と回答しているのです。母親学級・両親学級を例に挙げましたが、自治体が妊産婦向けに行っている他のサービスでも、情報取得だけでなく、相談ができた場合の参会者は「役に立った」と回答した割合が高くなっているのです。 
 このことは、自治体がウェブサイト等の一方的なコミュニケーションではなく、相対のコミュニケーションの強化を行うことで、妊産婦が抱える課題の解消により役立つ可能性があることを示しています。

 「厚生労働省の調査」では、組織内の専門人材の不足に悩む自治体や、他の事業が優先され、妊産婦の食生活の向上のための取り組みに手が回らないとする自治体が多いことも明らかになりました。
 現在、自治体の食生活向上に向けた取組みに関する外部の専門機関との連携状況を見ると、最も多い連携先である医療機関との連携ですら約1割程度の状況です。
 限られたリソースで取り組みを充実させることには負担が伴いますが、医療機関等専門機関との外部機関の力を借りて、妊産婦との相対のコミュニケーションの強化を行っていく余地は十分あるのではないか。自治体でも自前主義からの脱却を図るという発想転換が求められていると、今回の調査結果は示唆を与えてくれています。

参考:平成29年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 妊産婦等への食育推進に関する調査

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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