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次世代通信ネットワーク(5G)に向けた検討

2016年09月05日 山浦康史


要旨
●IoTの基盤として期待される第5世代移動通信システム(5G)に関する検討が始まっている。各社は本格的IoT時代の到来を有利な立場で迎えるべく、サービス検討や移動体通信事業者(以下、「MNO」)・機器ベンダーとの連携が急務であろう。
◇「5G」は2020年に商用化が予定されており、単なる高速化だけではなく、様々な企業のIoT活用を想定して整備されることが特徴であるものの、具体的な仕様はまだ検討段階である。
◇5G検討の流れに乗り遅れないように自社での検討が急務であり、MNOや機器ベンダーとの連携による実証実験や情報交換を早期に行うことで5G時代(本格的IoT時代)に備える必要がある。

はじめに
 第5世代移動通信システム(以下、「5G」)に向けた検討が盛んになってきている。現在の通信規格で最新のものは「4G」と呼ばれるLTE-Advancedであり、2015年にようやくサービスが開始されたところである。その次世代の通信規格となるのが「5G」であるが、現時点ではそのコンセプトが見えつつあるものの、詳細な仕様はまだ決まっていない。総務省は2020年開催の東京五輪に合わせて「5G」の商用化を目標として掲げている一方で、世界では韓国のKT社がノキアやエリクソンと提携し、2018年の平昌五輪での商用化を目指している。このため総務省としても開発競争に乗り遅れないよう2020年に確実に商用化すべく主導していくものと思われる。民間レベルでは、様々な企業が「5G」により生まれる市場を獲得しようと検討を開始しているところであり、我々のようなコンサルティング企業への相談や問い合わせが急増してきたという印象がある。そこで企業として5G時代に何を備えるべきか、どのような検討を開始すべきかについて考察する。

5Gに求められる要件
 5G時代に想定されるサービスの世界観として、①自動車、住宅、スマートメーター、ロボット、アクセサリー、センサーなどあらゆるモノがネットワークに接続されるといった、多様なIoTサービスが登場すること、また、②高精細動画ストリーミング(4K/8K)や、拡張現実(AR、VR)、触覚通信など、現在のサービスが高度化されるとの想定がある。「3G」や「4G」への移行の際には高速化に焦点があてられていたものの、「5G」では様々なサービスの登場が想定されることから、様々なニーズや要求(速度、精度、遅延等)に応える必要が生じる。これら要求に対して柔軟に対応できるようなモバイル通信インフラが「5G」には求められる。

技術的特徴
 技術的には、既存の「4G」で構築しているマクロセル(大規模な基地局)をベースに、高周波帯域のミクロセル(小規模な基地局)を重ね合わせたネットワーク構造が基本となる。このため、全てのインフラを刷新するのではなく、ミクロセルに関連する機器や、マクロセルとミクロセルを制御する機器などが新たに追加される流れとなる。サービスの高度化やトラフィックの飛躍的な増大を考慮して、「5G」においては「4G」と比較して100倍のスループット、100倍のデバイス接続、1msの低遅延、省電力化などが実現すべき要求条件(性能目標)とされるなど、大幅な高度化を前提に検討が進められている。

事業者の動き
 国内ではNTTドコモが「5G」に向けたインフラ整備の先導的な立場となり、通信機器ベンダー、チップセットベンダー、端末ベンダー、測定器ベンダー等(※1)と共同で実証実験を行っている。また、同社は標準化団体でも技術仕様策定のワーキンググループの議長を務めるなど一定の発言権を持っている。通信機器ベンダーは機器需要を獲得しようとコアネットワーク、バックホール、フロントホール、端末へのアクセス方式等の各レイヤーでの要素技術を積極的に開発している。「5G」インフラの推進という意味ではMNOと機器ベンダーの積極的な活動や情報発信が目立っている。他方、インフラを利用するサービサーや仮想移動体通信事業者(MVNO)も「5G」の動向に着目し始めている。これはIoTを企業としてどのように扱うかを検討する中で、多様な産業分野を対象とする技術・インフラとしての「5G」に着目しているという流れであると考えられる。

多様なニーズに対応するための「ネットワークスライス」
 先に述べたように、「5G」は多様な産業分野を対象として今後発生する多様なニーズに対応しようとするものである。標準化団体の3GPPではユースケースとして、大きく分けて、「Enhanced Mobile Broadband(高速)」、「Massive Machine Type Communications(大量接続)」、「Ultra-reliable and Low Latency Communications(高信頼、低遅延)」を検討している。また、標準化団体だけでなくMNOや機器ベンダーも同様の情報発信を行っている。これらのニーズ満たすために、複数の物理ネットワークを構築することはコスト面で現実的ではない。そこで、物理ネットワークを複数の論理ネットワークに分割して、端末種別やサービスによって最適な性能を持つネットワークを独立して提供することが考えられている。ネットワーク資源を切り出すという意味で「ネットワークスライス」と呼ばれている。
 技術的にはSDN(ソフトウェア定義ネットワーク)やNFV(ネットワーク機能の仮想化)等の技術を用いて資源を切り出して、コントローラーで管理するものと想定されているが、具体的な内容がほとんど決まっていない。そもそも仮想化する必要があるのか(仮想化の必要性、サービス提供見込み、サービサーの料金支払意向、CAPEX(初期設備投資)やOPEX(オペレーション費用)等からの妥当性)、加えて仮想化したリソースをサービサが柔軟に取り扱えるようにするのか(ニーズ有無、サービサーが管理するメリット・デメリット、インターフェース設計等からのあるべき姿)等を検討する必要があり、現時点ではMNOがユーザーニーズに基づきあるべき姿を検討している段階と言える。サービサーとしてはこの「スライス」を利活用する立場となるため、サービスを提供しやすいような形式でスライスが提供されるかなど、その内容に注目しなければならない。また、サービサーにとっての資源管理自由度が高まるほど、利活用ノウハウの有無が性能やコスト面に影響し、サービスの優位性を分ける可能性が出てくる。

サービサーや事業者としての取り組み
 先に述べたようにMNOがユーザーニーズに基づきスライス等「5G」インフラのあるべき姿を検討している段階であり、現在MNOがネットワーク仕様(特にスライス)を検討するために必要なのは「ユースケース」である。自動運転等の一部のユースケースにおいて共同実験などが行われているものの、多くの産業では具体的なユースケースやそれに伴う要求条件が見えていないことが課題として存在している。現時点でスライスの具体的な仕様は検討中であることを考えると、「5G」を利活用するサービサーやMVNOにとっては、情報発信やMNOとの連携により自社や自業界で使いやすい形式などのニーズに対応してもらうことも可能な段階であると言えよう。
 大規模にIoTサービスを展開しようとする事業者であれば、早々にサービスを検討して「4G」ネットワークで実験を行いつつ、MNOとの共同研究により「5G」インフラ仕様への反映させる方向で動くことで「5G」時代の本格的IoT時代に備えることが必要となろう。他方、大規模なユースケースを想定しない企業においても、IoTや5Gがあらゆる産業の変革を促す可能性が高いことを考慮すると、競合他社や新規参入(破壊的イノベーション)に打ち勝つためのIoT利活用が求められる。このため、「5G」をどのように活用していくかの検討を開始し、5G時代(本格的なIoT時代)の到来に向けた検討を開始すべきであろう。

図:5G化に向けたスケジュール


以上

(※1)エリクソン、富士通、ファーウェイ、インテル、キーサイト・テクノロジー、三菱電機、日本電気、ノキア、パナソニック、クアルコム、ローデ・シュワルツ、サムスン電子等。

※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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