3.介護問題を想定した多様な働き方の実現
(1)約8割の男性管理職が老親の介護に対する責任感を持つ
アンケート調査結果によれば、「老親の介護を主に行うのは、妻の役割だ」という考え方について、「そう思わない」と回答した男性管理職は約8割に上っている(図表1)。多くの男性管理職が老親の介護に対して、妻だけではなく、自身の役割でもあると認識している状況がうかがえる。

*「老親の介護を主に行うのは、妻の役割だ」という考え方について尋ねている。サンプル数は、516人。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を「そう思う」に、「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」を「そう思わない」として集計している
(2)定年後は約8割の男性管理職がフルタイムでの勤務を希望
アンケート調査結果によれば、現在の企業に定年まで勤めようと考えている男性管理職のうち、定年後もフルタイムで働きたい回答した男性管理職は、「現在の企業(関連会社含む)でフルタイムで働く」(72.8%)と「別の企業に再就職してフルタイムで働く」(10.2%)を併せて約8割に上っている(図表2)。

*サンプル数は、449人
なかでも、フルタイムで勤め続けたいと考える男性管理職に対して、その理由を尋ねたところ、「雇用の安定」(34.0%)が最も多く、次に「高い給与収入」(27.1%)であった(図表3)。定年後も安定した雇用や収入を維持しながら働き続けたいという男性管理職の意向が読み取れる。

*サンプル数は、373人
(2)仕事と介護の両立に向けて
上記では、男性管理職は介護への責任感を持っていること、定年後も雇用や収入の安定を求めてフルタイムで同じ企業に働き続けることを希望していることを示したが、このことは、将来、仕事と介護の両立を実現するための取り組みが必要であることを示唆している。公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「超高齢社会における従業員の働き方と企業の対応に関する調査」(2014年)によれば、50歳超の管理職の52.7%は、「現在および近々介護が必要な親がいる」と回答をしている。定年以降、働き続ける意欲が高くても、介護負担が発生した時点で、従来の働き方を維持したまま働き続けることは容易なことではないだろう。
では、具体的にはどのような施策が有効だろうか。本稿では2つの施策を取り上げたい。
1つ目は、介護と仕事の両立に向けた意識啓発活動が挙げられる。会社の制度を含め介護問題が発生した際に知っておくべき情報を早くから男性管理職に対して提供しておくことは、自身の問題の対応だけではなく、部下に介護の問題が発生した際にも、部下からの相談に対応しやすくすることにもつながる。男性管理職の介護問題への理解が高まることで、職場で介護が発生した際に、休職等の制度を利用しやすい風土づくりにもつながると考えられる。
2つ目は、早いうちから業務量や就業時間を調整できる働き方を制度化し、育児や介護等事由を問わず、多くの従業員が多様な働き方ができるよう社内でノウハウを確立していくことが挙げられる。在宅勤務の導入、出社・退社時間および休日の組み合わせの多様化、個人のキャリア志向に合わせた仕事量調整を許容するなど、多様な働き方を日頃から実践していくことで、介護等の事情で働き方に制約が出てきた場合でも、離職をすることなく、仕事を続けていく従業員を増やすことができる可能性もある。
仕事と介護の両立は、現状では課題が多く存在しているが、企業側は、将来の介護離職を想定して早めに取り組みに着手することが必要であるといえるだろう。
※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません