1つ目は、男性が抱える経済的責任の重さが挙げられます。平成27年版男女共同参画白書によれば、6割以上の女性が出産を機に離職する傾向が続いています。女性の非正規雇用の比率を見ると、25~34歳(42.1%)では4割であった非正規雇用の比率が、35~44歳(55.4%)、45~54歳(59.8%)と年齢層が高くなると半数を超えています。日本では、女性の多くが出産・子育てで離職をし、再就職をしても正規雇用従業員としての職を見つけることは難しく、結果として男性側の経済的責任が重くなってしまいます。経済的責任の重い男性にとって、一時的な離職、収入よりもやりたい仕事を優先する転職や起業(配偶者からの理解を得ることも含めて)をすることは容易ではなく、私生活の時間ややりがいを犠牲にして、現在の仕事を続けることを優先している男性も多いと考えられます。 2つ目は、固定的価値観に基づく社会や家庭からの男性に対する要求が挙げられます。内閣府「『男性にとっての男女共同参画』に関する意識調査報告書」(平成23年)によれば、「男もつらいと感じることがある」と回答した割合は、年代を問わず約6割以上となっており、特に40歳代と50 歳代においてその傾向は強くなっています。つらさを感じる理由としては、「仕事の責任が大きい、仕事ができて当たり前だと言われること」(36.1%)、「なにかにつけ『男だから』『男のくせに』と言われること」(30.1%)、「自分のやりたい仕事を自由に選べないことがある」(29.4%)、「妻子を養うのは男の責任だと言われること」(27.7%)が約3割近くを占めています。固定的価値観に縛られ、仕事や家庭に関わるプレッシャーを強く感じている状況がうかがえます。 3つ目は、多様なキャリアの選択の難しさです。年功序列型かつ終身雇用を前提として採用する日本企業に勤務してきた男性の多くは、多様なキャリアという選択をすることが難しい状態で働いてきました。中小企業庁「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業 報告書」によれば、兼業・副業を容認している企業は、アンケート回答企業全体の3.8%であることが示されていますが、兼業・副業を明確に容認している企業はほとんどありません。さらに、OECD「Society at a Glance 2005」によれば、家族以外の友人、同僚やその他の人々との交流をしていない人の割合は、日本が最も多く15.3%です。男女含めて、地域社会などで多様な人々と交流する時間を過ごしている人が諸外国に比べて日本は少ないことがうかがえます。男性にとって、企業勤め以外の多様な活動を見つけ、参加をしていくことは容易なことではなかったと考えられます。