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【ビッグデータが変える生活支援サービス②】
パーソナルデータの取り扱いに関する法改正の動向

2015年07月06日 段野孝一郎


 2013年度から2年にわたり、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部にて検討が進められてきた「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」が、2014年6月24日に取りまとめられた。同大綱はパブリックコメントを経て、2015年3月10日に「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」として閣議決定された。現在、第189回通常国会にて、法案としての審議がなされているところである。

 パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱は、現行の個人情報保護法の制定から10年余りが経過する中で、ビッグデータに代表されるIT関連の技術革新により、現行の個人情報保護法が想定していないさまざまなパーソナルデータの利活用、いわゆる「グレーゾーン」のデータ利活用による問題が顕在化する状況を踏まえて制定されたものである。パーソナルデータの利活用による新産業・新サービス創出による経済波及効果と、個人のプライバシー保護を比較考量した上で、パーソナルデータの利活用に関する事業者の障壁を取り払うとともに、個人情報およびプライバシーを保護する新たな環境整備を行うことを目的としている。

 パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱では、以下の改正内容を基本的枠組みとして提示している。
1. 本人の同意がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みの導入等
2. 基本的な制度の枠組みとこれを補完する民間の自主的な取り組みの活用
3. 第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保

 今回の制度改正において注目される点は、「1. 本人の同意がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みの導入等」であろう。パーソナルデータの利活用を検討する際に、データの目的外利用や第三者提供に関して本人の同意を必要とする現行法の仕組みは、事業者にとって負担が大きかった点を改め、パーソナルデータの利活用を推し進めようというものである。具体的には、「個人の特定性を低減したデータ」の取り扱いの緩和や、本人の利益・公益に資するために一層の利活用が期待されている情報に関する適切な保護と利活用を推進することが記載されている。

 上記の制度改正趣旨は、現在、国会で審議されている「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)」においては、現行の個人情報保護法第15条「利用目的の特定」第2項の改正として、検討が進められている。

①第15条(利用目的の特定)第2項
(旧)個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

(新)個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。


 2015年5月8日の内閣委員会の審議では、個人宅での電気使用量データの目的外利用について質疑が行われた。電気使用量データは、電力会社が電気使用量の計量ならびに電気料金の請求のために使うことが主目的であるが、例えば電気使用量の増減を分析することにより、在/不在の把握や安否確認に使える可能性がある。今回の個人情報保護法の改正によって、利用目的の特定性が低減されれば、電力のみならず、ガス、水道、通信等のパーソナルデータを活用した新たなサービス開発・サービス提供が可能になり得る。

 これまで、保険外サービスの一環として高齢者や要介護者の見守りを行う際は、専用のセンサーの購入・設置費用、センサー情報の送受信に必要なインターネット回線の開通・維持費用等、さまざまなコストが発生するために、民間のサービスとしての市場規模は限定的であった。しかし、今回の法改正により、個人宅に設置されている電力メーター、ガスメーター、インターネットルーター等の既存のインフラから収集できるデータを目的外に利用することが可能になれば、新たな設備投資が不要になるため、安価な見守りサービスが可能になる。その結果、所得が潤沢でない世帯においても、おのおののニーズに応じた見守りサービスの利用が可能になり得る。

 プライバシー保護との兼ね合いもあり、今般の個人情報保護法改正については賛否両論、さまざまな意見がある状況である。しかし今後、高齢者の大幅な増加することを考えた場合、既存インフラの有効活用を可能にする法改正は時宜にかなっていると言えるのではないだろうか。

以上


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません
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