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中国の環境汚染が自国の安全な食品生産を阻む

2012年09月13日 古賀啓一


中国の食品の信頼性は依然として低い状況にあります。カドミウム米や高濃度鉛が検出された漢方薬など、汚染された食品が生産・流通される事態が続いています。こうした食品汚染を引き起こしているのは、農地の環境汚染であると考えられます。危険性の高い安価な農薬の使用をはじめとした農地の環境汚染の原因のなかで、特に問題視されているのが重金属です。現在、中国の農地の約10%が重金属汚染の被害に遭っているともいわれます。

中国では、人口増大に伴う食料増産の圧力がかかる一方で、都市化や工業化のあおりで農地は減少傾向にあり、汚染された土地を避けて生産することが難しい状況にあります。中国の食品に対する不信を解くには、環境汚染の解決が不可欠です。

かつて日本においても、公害という形で環境汚染が問題になりました。しかし、国の規制が功を奏し、農地と農業用水流域の汚染状況が改善されました。中国においても公害対策として規制が強化されてきていますが、全国的に工業化の拡大が優先される傾向にあり、なかなか汚染状況の改善が進んでいません。また、中国では、日本と異なり、いったん汚染物質が河川や湖沼に入ってしまうと水の流れが緩やかなため、正常な状態に至るには日本よりも時間がかかる可能性があります。現状、中国の環境汚染が短期間に改善することは期待しづらい状況です。

環境汚染の改善が期待できない中、農地がとるべき手段は自らの環境を自らで守るというものだと考えます。例えば、汚染の可能性がある土は入れ替えを行い、汚染経路と想定される農業用水は浄化システムを導入する、さらに、水質のモニタリング結果を公開することで農地に環境汚染の影響がないことを担保する、といった取り組みが必要になるでしょう。中国に信頼できる食品が流通する環境を実現すべく検討を深めていきたいと考えています。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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