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日本農業再生のためのグローバル化戦略

2012年01月11日 三輪泰史


衰退が続く日本農業の再生策として、グローバル化が求められています。これまで、日本農業のグローバル戦略においては、輸出促進が重視されてきました。中国のデパートで日本産りんごが1玉千円以上という高値で販売されるなど、たしかに農産物輸出は大きなビジネスチャンスとなっています。

一方で、農産物輸出の限界についても冷静に捉える必要があります。まず、日本国内の生産力に限りがあり、耕作放棄地の活用等による増産余地はあるものの、輸出による収入だけで日本農業が再生するとまではいえません。また、大きなマーケットである中国に関しては、検疫を理由とした非関税障壁が立ちふさがっており、日本から中国本土に生鮮品として輸出できる農産物はりんご、梨等のわずか数品目に限定されています。加えて、原発事故の影響により、海外消費者の日本産農産物の購買意欲に大きな影響が出ています。

そのような中、弊社では、日本農業に活力を呼び込む新たなグローバル化戦略として、「日本式農業バリューチェーンモデル」を提唱しています。これは、躍進する新興国において、日本の農業技術・ノウハウを生かして高付加価値農産物を生産し、日本水準の流通・販売手法を通して現地富裕層・上位中間層に販売するというものです。海外で生産した安価な農産物を加工して日本に輸出するという従来型モデルと異なり、あくまで新興国での現地生産・現地販売を主としている点が特徴です。

本モデルでは、必ずしも現地で法人を設立する必要はないため、現地のパートナーへの技術移転という、出資を伴わない形態も有力な選択肢となります。これにより、日本の農家が抱える農地面積制約や資金制約という足かせが外れ、自らの企業規模にとらわれない海外展開が実現するのです。

日本国内での地産地消をベースに、海外輸出と現地生産・現地販売という2つのグローバル化を組み合わせることで、日本農業に新たなチャンスを生みだすことができます。

2012年が日本農業の飛躍の年になるよう、微力ながらも貢献したいと考えています。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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