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【ESG投資の注目点】ユニバーサルデザインで多様なニーズに応える

2011年10月01日 ESGリサーチセンター、小島明子


ESGを考える際に、ステークホルダーの1つとして顧客があげられる。企業にとっては、自社の製品・サービスを提供する顧客の満足度をいかに向上させるかが課題である。既にマーケットに存在する商品の改良や多数の顧客の要望を反映した商品の開発・改良に加えて、障がい者や高齢者等少数派が抱く固有のニーズにも耳を傾け、応えることもESGの視点では重要になってくる。そうした課題への1つの回答が「ユニバーサルデザイン」だ。

ユニバーサルデザインとは、可能なかぎり多くの人が利用可能であるように、製品や建物などをデザインすることである。使用者を障がい者に特定せず、全ての人向けを前提としていることに特徴がある。1980年代、アメリカのノースカロライナ州立大学の教授ロナルド・メイス氏が中心となり、提唱されるようになった。

凸版印刷は2001年より本格的にユニバーサルデザインに取り組み、可能な限り多くの人々にとって使いやすく、魅力的な製品・サービスの企画・開発を行ってきた。現在までに、業務上のミスを防ぐパッケージ、手間をかけずに調理できるシート、開け閉めが簡単な紙箱、適温が見てわかるパッケージなど様々な製品を開発・提供している。

また、TOTOでは、2006年にUD研究所を神奈川県茅ケ崎市に設立した。UD研究所を中心にユニバーサルデザイン活動を実施し、現在では、TOTO全社でユニバーサルデザイン活動を展開している。レストルーム、キッチン、洗面所などでユニバーサルデザインを考慮した多くの商品を提供している。

企業が顧客満足を向上・維持するためには、①購買前の適正な情報提供②購買した顧客の不満・疑問に対する適切な対応③それらのプロセス等も含め、幅広く情報を収集し製品・サービスの改良・開発を行っていく――といった取り組みがあげられる。特に③の取り組みは、企業の業績にも大きく影響を与える可能性が高く、企業はお客様相談室の設置、モニター制度など、様々な手法で顧客の声を取り入れ、商品開発・改良に活用している。

そのプロセスの中で多数の顧客が持っている要望・ニーズを優先するという考え方ではなく、障がい者や高齢者等少数派の要望や意見といった固有のニーズも含めて汲み取ろうとする企業の取り組みは、結果として、新たな製品・サービスの開発や改良につながり、長期的には企業価値向上につながると考えられる。

国内だけを見ても、少子高齢化や外国人労働者の増加などからも企業が製品・サービスを提供する顧客は多様化しつつある。顧客の多様なニーズに耳を傾け、社会への貢献を前提に考えた製品・サービスの開発・改良に努める企業が、顧客、さらには広く社会から信頼をされる企業でいつづけるのではないか。

*この原稿は2011年9月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。
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