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Business & Economic Review 2001年12月号

【REPORT】
体質改善進むわが国企業

2001年11月25日 調査部 経済研究センター 枩村秀樹


要約

2001 年度の企業業績は、3年ぶりの減収減益になることが確実な情勢となっている。今回の業績悪化の特徴は、業種間での悪化度合いに大きなバラツキがあることである。すなわち、製造業で業績悪化が深刻化している一方、非製造業では相対的に堅調を維持している。

非製造業の堅調の背景には、ここ数年進められてきた収益体質の改善が寄与している。99 年以降の収益体質改善は、固定資産・有利子負債・人件費の削減を通じた固定費圧縮によってもたらされた。こうした動きは、企業が従来のシェア重視経営から利益率重視の経営姿勢へと転換していることを反映したものであり、今後も固定費削減に向けたリストラ努力は継続されるものと予想される。

長期債務残高は2000年以降減少傾向にあり、キャッシュフローとの比較でみたマクロベースの過剰債務問題はほぼ解消している。もっとも、建設・流通・不動産など構造不況業種では依然として高水準の過剰債務を抱えており、今後、調整圧力が一段と高まることは避けられない。

資本ストックは、能力増強投資の抑制や過剰設備の廃棄などにより減少に転じている。この結果、長期下落傾向にあった設備収益率はこのところ持ち直してきており、設備投資拡大のための条件は着実に整いつつある。また、経営効率化に向けたIT投資も、ソフトウエアを中心に堅調を維持している。

バブル崩壊以降急上昇した労働分配率もピークアウトしており、人件費調整もようやく進展し始めている。成果主義賃金制度の導入、パート・派遣比率の引き上げを進めた結果、下方硬直性があるといわれていた賃金が柔軟性を取り戻しつつある。

当面を見通すと、以上のような体質改善によるプラス効果よりも、景気後退に伴うマイナス効果の方が大きく作用する。製造業では業績悪化が一段と深刻化する一方、非製造業でも売上減少を通じた収益圧迫が強く働き始めると予想される。

マクロ景気の動向から企業業績の回復時期を展望すると、米国経済の調整局面持続、わが国経済の回復牽引力不在などから、早くても2002 年度後半とみられる。企業の経営体質改善を生かし、前向きの経営姿勢への転換を促すためにも、政府としては、構造改革を着実に進展させ内需主導型成長への地歩を固めることが求められる。
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