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Business & Economic Review 2001年11月号

【REPORT】
アメリカ経済の行方-ITブーム終焉と同時多発テロを受けて

2001年10月25日 調査部 経済研究センター 岩崎薫里、調査部 経済研究センター 鈴木淑子


要約

米国では、2000年央以降、深刻な景気調整局面が持続していたところへ、同時多発テロが追い討ちとなり、リセッションに突入する可能性が高まっている。今回の景気調整が厳しいものとなっている根本的な要因としては、ITブームの終焉が指摘される。
90年代入り以降、ITが飛躍的に発展し米国経済に浸透するなかで、ITへの期待が膨らみ、ITブームが生じた。これは、労働生産性の上方シフトをもたらした。しかしながら、2000年春以降、ITへの期待が後退し、ITブームが終焉するとともに、IT関連機器の過剰生産能力・在庫、IT企業の財務体質の悪化などが表面化した。そして、これまで米国景気を牽引してきたIT部門は、現在では逆に景気の下押し要因となるに至っている。

今後を展望しても、ITブームの終焉に伴うさまざまな調整圧力が、景気回復の阻害要因となる公算が大きい。企業部門では、過剰に積み上がった資本ストックや債務に対する調整圧力から設備投資が抑制されるとみられるほか、家計部門では、株価の下落が逆資産効果となって個人消費の下押し圧力になると予想される。

米国経済の現在の調整が、バブル崩壊後の日本のように長期にわたって持続する公算は小さい。これは、政策当局による初期対応の早さや金融部門の健全性などによる。もっとも、米国のITブーム終焉の影響もかなりの程度深刻とみておくべきである。株価調整の長期化が米国経済のダイナミズムを阻害しかねないことに加えて、粉飾まがいの決算など、ITブームのなかで隠れていたさまざまな歪みが、調整長期化に作用する恐れがある。

こうした状況を踏まえて今後を展望すると、テロへの報復活動が2002年初頃にひとまず収束するとの前提に立てば、財政・金融政策および物価下落の効果を下支えに、米国景気は2002年春~夏頃には持ち直しに転じると予想される。ただし、報復テロを恐れた企業・家計マインドの抑制や安全対策の強化が経済活動を阻害し続けることに加えて、前述の調整圧力を背景に、2002年中の回復力は緩慢なものにとどまるであろう。調整が一巡する2003年以降には、ITに対する需要は再び盛り上がり、90年代のハイペースへの復帰は望めないまでも、堅調な拡大傾向を辿る公算が大きい。
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