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Business & Economic Review 2001年08月号

【POLICY PROPOSALS 】
強まる構造調整圧力と雇用再生への課題-構造改革に伴う痛みの大きさと対応策

2001年07月25日 調査部 経済研究センター 山田久


要約

雇用のミスマッチが根強く残るなか、近年、完全失業率は上昇傾向。労働分配率からみて、構造調整業種を中心に企業内過剰雇用が根強く残る状況下、構造改革の進展に伴い、これまで先送りされてきた雇用調整圧力が顕在化していく見通し。

(1)15.3 兆円の不良債権(危険債権)のオフバランス化により、今後2~3年で50万人程度が労働市場に放出される可能性。
(2)仮に2002~2005年まで年間2兆円ずつの公共投資削減を前提とすれば、今後5年間で建設業雇用を65万人減らす圧力に。
(3)中国の台頭を主因とするアジア産業地図の変貌を背景に、ここ数年来の製品輸入の増勢が続けば、今後5年間で製造業雇用者数が33万人失われる恐れ。

もっとも、不良債権処理・財政再建は短期的には過剰雇用の吐き出し圧力となるものの、構造改革の進展は、「負の遺産」により抑圧されていた経済の成長力をある程度復元させ、徐々に新しい雇用機会を生み出していくという側面を持つ。

2 .しかし、「負の遺産」の処理を通じた成長力の復元だけで十分な雇用機会が生まれる保証はなく(「負の遺産」の処理に伴う成長率復元で+123万人の雇用増効果)、雇用の受け皿を提供するような新しい成長産業の創出が雇用再生にとって最もクルーシャルな問題。その際、雇用の受け皿となる産業としては、アメリカの経験に従えば、

(1)医療・介護、教育といった「人的公共サービス産業」、および、
(2)情報システム・専門ホワイトカラー業務等の「アウトソーシング産業」が有望。

試算によれば、医療・介護、人材派遣分野だけで、制度改革を通じて今後5年間に+85万人の雇用創出が可能であり、「負の遺産」の処理に伴う成長率復元による雇用増効果(+123万人)を含めれば、ネットで各種構造調整に伴う雇用喪失量(▲150万人)を上回る計算。

3 .以上のような雇用再生のシナリオ実現のためには、産業政策・社会保障政策も視野に入れた「包括的雇用政策」の枠組みが不可欠。その3本柱は、

(1)市場原理を基本とした産業・雇用システムの構築、
(2) ポスト構造調整期の福祉ビジョンの明示、
(3)応急対策としての十分なセーフティーネット。

まず、「市場原理を基本とした産業・雇用システムの構築」のためには、規制改革・競争政策・金融改革・税制改革を通じた産業再生・起業活発化のための基盤整備が基本。とりわけ、医療・教育分野等への競争原理の積極的導入により、民主体の公共サービス供給体制を構築していくことが必要。
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