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Business & Economic Review 2003年11月号

【REPORT】
実質GDP の「強さ」をどうみるか-統計の“クセ”を踏まえた景気判断を

2003年10月25日 調査部 経済研究センター 枩村秀樹


要約

  1. 実質GDPは、2003年4~6月期まで6四半期連続の増加となるなど、景気が着実に回復していることを示している。もっとも、こうした実質GDPの強さが実体経済を正確に反映していないのではないか、との批判は根強い。本稿では、a.GDPデフレーターの下落幅が拡大している背景、b.2002年夏に導入された供給側推計の問題点、という二つの切り口から、実質GDPが予想以上に回復している原因について分析を行った。

  2. まず、GDPデフレーターの下落幅が拡大している要因として、a.コンピューターなどの品質向上、b.ウエートの変化、c.賃金の下落、d.交易条件の悪化、の4点が指摘出来る。
    このうち、b.のウエートの変化を通じたデフレーター下落は、実体経済のダイナミックな動きを正しく捉えた結果である。むしろ、ウエートの変化を正しく反映出来ない生産統計や名目GDPをもとに形成された「実感景気」の方に下方バイアスがあると考えるべきである。
    一方、a.の品質向上分を物価下落として織り込むことによる実質GDPの上振れは、われわれが通常考える「景気」という観点からみる限り、実体経済の動きを正確に捉えたものとは言い難い。品質調整の対象製品によるデフレーター押し下げ効果は0.7%と試算され、実質GDPを押し上げる大きな要因になっている。

  3. 次に、供給側推計の問題点としては、名目GDPが過大推計されている可能性が指摘出来る。すなわち、国内総供給を各需要項目へ配分する際に、直近の比率で固定しているため、投入・産出構造の変化を正しく捉えることが出来ず、真の名目GDPから乖離する可能性が高くなる。実際、経済産業省の総供給表から試算される中間投入比率は2002年以降、急上昇しており、個人消費・設備投資が過大評価されていることが示唆される。

  4. GDP統計をもとに景気を判断する際には、こうした特徴を理解したうえで利用することが必要になる。とりわけ、実質GDP が上振れていることを考慮して、景気の判断基準を従来よりも上方シフトすることが求められる。また、GDPデフレーターは、品質向上を織り込む分だけ下振れるため、一般物価水準という意味におけるデフレの指標として使用することは慎重になるべきである。
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