要約
- わが国の産業界は、高度成長期に各地で頻発した公害問題、2度にわたるオイルショックを乗り越え、産業を発展させつつ、環境保全や省エネルギー、省資源に努めてきたといわれる。そこで、産業界の環境への取り組みを、エネルギーや廃棄物に注目して、「資源生産性」という視点で評価した。「資源生産性」とは、GDP などの経済指標を、生産のために投入された資源の量で割って求める指標で、資源利用の効率性を測るものである。評価の結果、バブル崩壊直後の1990年頃を境に、それまで上昇基調であった製造業などの資源生産性は、低下に転じていることが明らかとなった。なお本稿では、資源生産性を表す指標として、a.鉱工業生産指数をエネルギー消費量で割ったエネルギー生産性と、b.同じく鉱工業生産指数を廃棄物排出量で割った廃棄物生産性の二つを用いた。評価対象は、エネルギー生産性については、鉱業と製造業を、廃棄物生産性については、製造業と建設業とした。
- 80 年代後半まで上昇基調であった製造業などのエネルギー生産性、廃棄物生産性は、90年頃を境に下落、もしくはその上昇ペースが減速した(廃棄物生産性については、95年度頃から上昇基調を回復)。生産性低下の要因は、a.景気の低迷、b.省エネ・省資源に対する企業の意識の後退や、c.生産工程の変更、などが考えられる。なお、廃棄物生産性の低下は、とくに建設業において顕著にみられるが、その要因としては、景気対策として行われた公共事業の大幅な拡大の影響が指摘出来る。
- わが国のエネルギー生産性の水準は、すでに世界最高レベルにあり、今後急激な改善は困難であるという認識もある。しかし、地球温暖化や資源の有限性に照らして考えれば、今後も持続的な資源生産性の向上が求められる。バブル崩壊以降、設備投資が伸び悩むという逆風はあるものの、企業は省エネ設備の導入や機器の更新など、資源生産性の向上に努めるとともに、行政がそれを後押しすることが重要である。
- 低下傾向にあるエネルギー生産性を再び向上させるためには、技術革新による機器や設備の更なる高効率化が必要である。国には、効率性の高い機器の開発に向けた補助制度の強化が望まれる。その財源としては、見直しが進む石油税を中心とした、エネルギー関連諸税のグリーン化により確保することが望ましい。また、環境省が推進する環境税も、省エネ意識の高揚と、機器開発補助費用の財源確保が達成されるため、早期に導入を検討すべきである。