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Business & Economic Review 2004年05月号

【REPORT】
動き出す中国のクレジット・カード市場

2004年04月25日 調査部 経済研究センター 岩崎薫里


要約
  1. 中国では、クレジット・カードは消費者の決済手段としてほとんどなじみのない存在である。銀行カードの発行枚数自体は膨大な量に上るものの、そのうちクレジット・カードは5%にすぎず、残りはキャッシュ・カード機能付きのデビット・カードである。しかも、クレジット・カードの多くが預金を担保とするセキュアード・カードの形態をとっており、日本で一般的な無担保で与信が供与されるクレジット・カードはごくわずかにすぎない。

  2. 中国でクレジット・カードが普及していない背景としては、a.消費水準が低く、クレジット・カードを利用する場が限られていること、b.個人信用情報の共有システムの不備をはじめ、クレジット・カードにかかわるインフラに多くの問題を抱えていること、などの点が指摘できる。

  3. しかしながら、ここにきてクレジット・カードを巡る環境に変化がみられる。まず、都市部において、所得水準の急速な上昇を主因に、わが国の高度成長期のように個人消費が盛り上がりつつある。それに伴って、クレジット・カード保有へのニーズも次第に高まっていく公算が大きい。一方、政府の取り組みにより、都市部でのカード・インフラの整備が着実に進展している。さらに、外銀による中国市場への進出という新たな展開も生じている。

  4. こうした動きを踏まえたうえで、中国のクレジット・カード市場を展望すると、全国ベースでの急速な普及は期待薄ではあるものの、都市部に限れば、今後次第に普及していくことが予想される。ただし、カード・インフラの整備が進んでいるとはいえ、依然として不備が多い状況下で、リスク管理の観点から、銀行がカード発行に対する慎重姿勢を大きく崩す公算は小さい。このため、普及のペースは緩やかなものにとどまらざるを得ないであろう。

  5. 中国でクレジット・カード・ローンが根付くか否かは、依然、不透明である。これまで中国で個人向けの小口ローンが提供されてこなかったことや、同じ消費パターンを有するといわれる香港や台湾ですでにカード・ローンが普及していることは支援材料となる。しかしその一方で、借金への根強い抵抗感が、カード・ローン普及の阻害要因として働く可能性も排除できない。

  6. 日本のカード関連会社のなかでは、JCB以外は中国に本格的に進出していない。中国に進出する際には、a.顧客セグメントを絞り込むこと、b.リスク管理を十分に行うこと、などに留意する必要があろう。
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