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Business & Economic Review 2004年04月号STUDIES

コンテンツ・ビジネス振興のための制度整備の在り方

2004年03月25日 調査部 IT 政策研究センター  野村敦子


要約
  1. コンテンツ・ビジネスとは、映像、音声、文字、データなどから構成される各種コンテンツ(情報の内容)の制作、流通にかかわるビジネスの総称である。IT分野における技術革新を背景に、ネットワークやコンテンツ、デバイスのデジタル化が進展しており、世界各国で、情報化への取り組みが強化されている。これに伴い、コンテンツの利用範囲が大きく拡大することになり、コンテンツ・ビジネスは今後一段の成長が予測されている。しかしながら、わが国のコンテンツ産業は、a.業界の構造的な問題、b.人材不足、c.海外市場への対応の遅れ、d.著作権に関連する問題、e.コンテンツの不正利用、など多くの課題を抱えており、この流れに乗り遅れるのではないかという懸念も大きい。

  2. 一方、IT立国を目指す欧州や韓国・台湾などでは、コンテンツ大国のアメリカに追いつくべく、すでに国家戦略としてコンテンツ・ビジネス振興策を打ち出しており、積極的な育成策を講じている。EUは、90年代初めにメディアプログラムを策定し、ヨーロッパ全体としてのコンテンツ産業の発展を目指している。イギリスにおいても、コンテンツ産業は成長性が高く、イギリス経済への貢献度が高まっていることから、政府は映画産業やデジタルコンテンツ産業に対し積極的な支援策を講じている。フランスでは、戦前より映画産業への支援策が講じられてきた。最近では、政府が直接コンテンツ産業に補助金を提供するだけでなく、民間からの投資促進策も講じられている。韓国は、2002年7月に「オンライン・デジタルコンテンツ産業振興法」を制定し、国を挙げてコンテンツ産業の育成に取り組んでいる。台湾も同様に、6カ年国家重点計画「両兆双星核心優勢産業計画」を策定し、デジタルコンテンツ産業を重点育成産業の一つに指定している。各国に共通するのは、a.国全体としてコンテンツ産業の育成に取り組んでいること、b.国が補助金を交付したり、税制優遇措置を講じるなど経済的な支援策を実施していること、c.コンテンツ業界と協力して高等教育機関による人材育成に注力していること、d.国内市場だけでなくグローバル展開を視野に入れていること、などである。

  3. わが国では、コンテンツ産業の振興策は、これまで産業振興よりも、文化的な観点からの取り組みが中心であった。しかし、今後は、産業振興や国際競争力の強化といった視点からの支援策の比重を高める必要がある。第1に、コンテンツ事業者自身が容易に資金調達出来るように商品ファンドの規制緩和や信託制度、完成保証制度の導入を図り、流通部門に依存する現在の構造を変革することにより、コンテンツの制作・流通の活性化を図ることである。第2に、コンテンツ産業への投資促進を図るために税制優遇措置を講じる必要がある。また、コンテンツ制作への資金の還元を図るために、コンテンツ事業者に対する税制優遇措置を検討する必要もある。第3に、財政基盤が脆弱なコンテンツ事業者に対しては公的な経済支援策を講じる必要がある。

  4. コンテンツ・ビジネスのさらなる成長を図るためには、海外展開を視野に入れることが不可欠である。そのためには、コンテンツ産業の海外進出を金・人・モノ・情報の各側面から支援する専門機関の設置を検討すべきである。また、わが国には専門家を育成する高等教育機関が不足している。構造改革特区で株式会社によるコンテンツ専門大学院の設置が認められた。これを特区だけにとどめることなく、民間事業者による高度な技能を有する専門人材育成への取り組みに対しても、強力に後押しする必要がある。海外との人材交流も積極的に行うべきであろう。
    さらに、コンテンツの不正利用を撲滅していくためには、国際的な協力体制の構築が不可欠である。アジアのリーダー役として、わが国の果たすべき役割は大きい。
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