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Business & Economic Review 2004年04月号

【REPORT】
引退世帯が支える消費堅調と家計負担増加のインパクト

2004年03月25日 調査部 経済研究センター 小方尚子


要約
  1. 2004年度以降、年金保険料の引き上げなど家計負担の増加につながる制度変更が相次いで予定されており、景気への悪影響を懸念する声がある。

  2. 個人消費の現状を世帯タイプ別にみると、消費支出額は、勤労者世帯では可処分所得の減少に連動する形で、過去5年間に約1割減少した。一方、引退世帯では、a.収入の相対的な安定性の高さ、b.物価下落による金融資産の実質購買力の増加などを背景として消費性向が上昇し、ほぼ横ばいで推移している。

  3. こうした引退世帯の消費の堅調持続は、世帯数の増加ともあいまって、わが国の個人消費全体を支える形となっている。もっとも、全体の消費性向の上昇を招くため、中長期的には貯蓄不足による金利上昇を惹起し、日本経済にマイナスに作用するリスクもはらんでいる。

  4. 配偶者特別控除の廃止や雇用保険料引き上げに加え、2004年度政府予算案と税制改正案に基づく制度変更による年金保険料の引き上げ等から、家計負担が増加する。その額は、2004年度に5,000億円、2005年度に1兆円超となる。

  5. 今回の制度変更が家計に与える消費への下押し圧力は無視出来ないものの、以下の事情を勘案すると、2004年度の消費の底割れは回避されるものと考えられる。

    a.家計への給付から家計の負担を差し引いた「ネット」給付額の増加が続くこと
    b.物価下落による金融資産の実質購買力の上昇が続くこと
    c.雇用・所得環境悪化の下げ止まり傾向がみられること

    もっとも、2005年度以降、現在検討されている一段の家計負担の増加を伴う制度変更が実施された場合、景気後退を招くリスクが高まることも考えられる。

  6. 個人消費の持続的な成長のためには、a.持続可能な社会保障制度の構築を着実に進め、制度への信頼を取り戻していくとともに、b.経済再生を通じ、勤労者世帯の家計所得の増加を実現することが必要である。とりわけ、家計所得の増加は、貯蓄率の低下に一定の歯止めをかけつつ消費を拡大するために不可欠である。
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