Sohatsu Eyes いま牛肉を考える 2004年11月09日 三輪泰史先月、ある大手牛丼チェーンが牛丼販売を再開し、「牛丼のある牛丼屋」という当たり前の光景が戻りつつあります。私のような外食の多いサラリーマンにとって、牛丼が復活しつつあるのは喜ばしい限りです。 今回の牛丼再開では、日本の食生活における牛肉の浸透度に改めて驚かされました。ご存知の通り、明治維新以前、牛肉はメジャーな食材ではありませんでした。例えば、初の牛鍋屋の開店は1862年と言われています。つまり、この150年足らずの間に牛肉が日本文化に完全に溶けこんだわけです。他にも韓国料理の唐辛子、イタリア料理のトマトのように外国の食材が不可欠なものとして定着した例は多々見られます。本当に人間は食いしん坊な動物ですね。既に日本の食卓に欠かせぬ牛肉ですが、問題となったアメリカ産牛肉にも動きが出始めています。日本のBSEの検査基準は非常に厳しいものですが、それを世界の平均的なレベルまで緩和するというものです。輸入再開となれば、売り上げが大幅に落ち込んだ焼肉店や牛タン料理店にとっては救世主なのではないでしょうか。ただし、この背景には単なる安全性の問題のみならず、日米の貿易問題やWTO主導の農産物貿易自由化の流れが見え隠れしています。 我々消費者にとっては、安価で品質の安定したアメリカ産の牛肉を待ちわびると同時に、やはりその安全性は気がかりなところです。食品や薬など人間が直接摂取するものは、問題が発生してからでは取り返しがつきません。「検査しても発見できないから、検査は意味がなく不要である」という国際的な流れに対して、安全重視の日本の消費者がどのような反応を示すのか。農業問題・食糧問題に取り組む私にとっても、非常に興味深い動きとなりそうです。※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。