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環境と金融の10年

2009年11月13日 村上芽


 1999年にはじめて社会的責任投資ファンドが登場してから10年がたち、環境に配慮した金融(以下、環境金融)の概念は国内の金融機関に普及しつつある。この間、たとえば排出権ビジネスは銀行法の改正により金融ビジネスとして正式に認知されたし、企業の環境配慮状況を評価・格付する金融商品は投資信託から融資にまで広がった。また、金融の現場におけるビジネスパーソンの意欲や関心も、近年着実に高まっている。しかし、環境金融が期待どおり、本当に金融を通した環境改善に役立つほど育っているのだろうか。現状では以下の3つの課題があると考える。

・企業に対する金融機関の働きかけは不十分
 金融機関が企業の環境経営を十分に促し、加速させているかという点において、まだ責任あるアクセルの役割を担っているとはいい難い。“環境金融”をうたう商品は増えているものの、環境経営を推進しようとする企業が、金融機関を重要なステークホルダーとして認識しているとはいえず、実態としては一部の企業が一部の環境金融商品を上手に活用しているにすぎない。企業と金融機関の関係性のなかで、「経営課題に環境問題が関わる」との認識が十分に共有されてこそ、環境金融の本来の役割が果たされる。

・大口資金の出し手不足
 環境金融が社会の資金の“流れ”全体を環境配慮型にする役割を担っているかという点も、いまだ不十分である。特に資金の流れの入り口における、重要なプレイヤーの存在感が希薄である。具体的には、年金基金や個人富裕層の積極的な動きが見られず、この点は海外市場と比較しても遅れている。いいかえれば、資金量のあるグループへの働きかけ(制度面、商品面)が不足している。各種金融関連法制度や税制の枠組みを前提とすると、個々の金融機関の取り組みで解決しにくい障壁があることも指摘したい。

・環境金融の多様化を阻む障壁
 環境金融、あるいは社会的責任のための資金の流れに関する過去10年程度の各種調査研究を振り返ると、欧州にみられるソーシャル・ファイナンス、あるいは米国のコミュニティ開発金融のような取り組みが不足していることが頻繁に指摘されている。単に海外の仕組みを導入すればよいというものでは決してないが、国内における金融手法を多様化する取り組みが、放置されていたともいえる。国内のNPOバンクが成功・先進事例として挙げられることも多いが、貸金業法改正をめぐっては存亡の危機に立たされ、いまだに見直し議論は固まっていない。金融手法の多様さは環境への取り組み方の多様さを支えるものであり、それを可能にするための政策が必要である。
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