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Business & Economic Review 2009年11月号

【STUDIES】
最近のアメリカ地方政府の財政運営の動向-カリフォルニア州の財政危機の展開

2009年10月25日 河村小百合



要約

  1. 2008年9月のリーマン・ショック以降の世界経済の急速な減速は、アメリカの地方政府の財政運営にも深刻な影響を及ぼしている。

  2. アメリカの連邦制度は、連邦政府、50の州政府、約9万の地方政府、という三層構造から成っている。合衆国憲法において、連邦政府と州政府は対等の関係にあり、各州も相互に対等な関係にある。こうした特徴は、財政制度上も貫かれており、連邦政府と州政府との間での財政調整制度は現在、存在しない。その裏返しとして、各州は、連邦政府並みの、強力な課税権を有する構造となっている。

  3. 連邦制度のこのような構造を映じ、何らかの経済的なショックが発生した場合、州政府財政が被る影響は、相当な規模に達することになる。アメリカの州政府には、1830年代のバブル崩壊時に、幾つかの州がデフォルト(債務不履行)に陥った経験がある。こうした経験を教訓に、各州政府は、均衡予算要求(赤字州債の発行禁止)をはじめとする、健全な財政運営を維持するためのルールを法制度上導入し、現在に至っている。

  4. 最近のアメリカ州政府の財政危機は、カリフォルニア州において、とりわけ深刻な展開をたどった。同州では、2010会計年度に歳出・歳入を均衡させるためには、約455億ドル、同州の総予算規模に対する比率でみて実に49.3%という、極めて大幅な赤字を埋める必要が生じた。財政危機は、2008年秋に表面化した。2009年2月に、大幅な歳出削減と増税で構成される予算が州議会で合意されたものの、その後も収支不足はさらに拡大した。連邦政府による州債への利子補給プログラム創設等の支援の動きもあったものの、事態は改善せず、5月には、さらなる歳出削減と増税策が住民投票にかけられたものの、ほとんどの項目が否決された。そして新年度入り後の7月、同州政府はついに資金繰りに窮し、金融市場における州債のデフォルトを回避するため、住民等に対する現金給付を繰り延べるIOUsの発行を開始した。多くの金融機関は、このIOUsの現金化には応じないスタンスに途中から転換し、住民等の現金給付受領の権利は事実上、相当程度犠牲とされた。その後7月24日に、追加的な財政収支均衡策を議会が合意し、発行済みのIOUsは9月4日までに償還されることとなった。この間、同州では、増税とともに、公立学校の民間への譲渡、州立刑務所の一部閉鎖と服役囚の釈放、州公務員の一時帰休、といった厳しい歳出削減策が実行に移されつつある。カリフォルニア州の財政危機は、いったん、小康状態に入ったものの、今後についてはなお、予断を許さない状況にある。

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