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Business & Economic Review 2009年11月号

【特集 新興国経済を考える】
インドネシアは“BRICs”の一角に食い込めるか-2期目を迎えたユドヨノ政権の課題

2009年10月25日 三浦有史



要約

  1. 2009年に実施された総選挙および大統領選挙でユドヨノ大統領に対する圧倒的な支持が表明され、政権の安定性は格段に高まった。経済面でも中銀総裁として金融政策の舵を取ったブディオノ氏が副
    大統領に就任することで、堅実な政策が維持される見込みである。

  2. インドネシアは、周辺国が金融危機の影響でマイナス成長に落ち込むなか、4%台の成長率を維持している。GDPに占める個人消費の割合が高く、これが危機下でも堅調に推移したことが大きい。この背景には、①金利の低下、②財政効果、③選挙効果がある。また、対外債務の削減や銀行部門の安定化などの堅実な政策により、経済の健全性が高まったことも見逃せない。

  3. インドネシアが5%程度の経済成長率を達成するのにそれほど時間はかからないであろう。問題は7%成長の壁を突破できるか否かである。消費だけに依存した成長には限界があり、投資と外需の成長に対する寄与度を引き上げる必要がある。しかし、中国やベトナムと比較すると国内民間投資や外国直接投資に勢いがない。外需についても、対中貿易は赤字構造にあるため、貿易の拡大によって外需の寄与度が低下する可能性がある。

  4. 外需の経済成長に対する寄与度は輸出競争力に、輸出競争力は投資の厚みに依存する部分が大きいことから、インドネシアにとっての当面の課題は、投資環境の一層の整備をはかり、内外の投資を活性化していくことにある。投資環境の改善においては、①労働法制の見直し、②汚職の一掃、③インフラの整備、④テロ対策の強化などが重要である。

  5. 投資環境の改善には政権に対する支持率を低下させるものがあり、投資家が期待する改革を実現することは容易ではない。しかし、①投資先としての評価が高まるとともにテロを誘発する要因が弱まっている、②対インド輸出のポテンシャルが大きい、③民主国家としての基盤を整えつつあるなどの変化がみられ、これらの変化を捉えて改革を進めれば、7%成長が視野に入ってくる。

  6. インドネシアに対する評価は、評価の重点をどこに置くかあるいは時間軸をどのように設定するかでかなり変わる。同国が持続的な経済成長を遂げるか否かは、同大統領のリーダーシップにかかっている。リスクを考慮しない楽観論や過度の悲観論に流されることなく、改革の成果を冷静に見守っていくことが重要である。

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