Economist Column No.2026-061
「令和のコメ不足」でコメ離れが小幅にとどまった理由
2026年09月17日 小方尚子
コメ価格の高騰は、一般に「食生活のコメ離れ」を促しやすい。しかし、今回の「令和のコメ不足」では、1993年~94年にかけての「平成のコメ不足」よりも価格上昇が大きかったにもかかわらず、コメ離れの動きは限定的である。総務省の「家計調査」で二人以上世帯の実質消費額をみると、「平成のコメ不足」では、コメの消費額が2割減少した一方で、今回の「令和のコメ不足」では1割減にとどまっている。
「令和」のコメ離れが価格高騰の割に小幅にとどまった背景として、二つの要因が考えられる。第1に、コメの代替品となりやすい小麦製品の価格上昇である。「平成のコメ不足」ではコメの価格だけが急騰したのに対し、今回は、北米の干ばつやウクライナ戦争による供給減少、円安の進行を受け、パンや麺類などの小麦製品の値上がりが先行した。このため、コメから小麦製品へ移ることによる割安感は、「平成のコメ不足」の時ほど大きくなかった。
第2に、国産米不足を補った輸入米の品種や食味の違いである。「平成のコメ不足」の緊急輸入では、タイ米が主食用として多く流通した。当時はタイ米などの長粒種に適したエスニック料理が現在ほど一般的ではなく、通常の炊飯方法では味に違和感を覚える消費者が少なくなかったため、米飯食から小麦製品へのシフトを促したと考えられる。一方、「令和のコメ不足」で主食用の輸入米として流通したのは、日本のコメに比較的近い米国産の中粒種が多かった。「炊く前に30分は水に浸して」といった注意書きに沿えば、国産米と大きな違いなく食べられると感じる消費者も多く、輸入米がコメ離れに歯止めをかける役割を果たした。
今後、コメ価格は緩やかに下落していく見通しである。26年産米は概ね豊作が見込まれているほか、備蓄米の回復に向けた25年産米の政府による買い入れも、コメ価格を再び押し上げるほどのインパクトにはならない見込みである。このため、価格上昇を背景とした短期的なコメ離れは、このまま収束に向かうと期待される。
もっとも、長期的なコメ離れの流れまで止まるとは考えにくい。食の洋風化に加え、ナカ食(調理食品)や外食へのシフトは根強く続くとみられる。ナカ食の弁当や外食にはコメを含むものも多いが、そこでは安価な輸入米が使われる場合が多い。今回、国産米にさほど劣らない外国産米があるとの認識が広がったことで、外食店などでの使用を中心に、国産米の需要が落ちる可能性もある。
コメ離れに加え、外国産米へのシフトが進めば、国内のコメ生産基盤が弱体化する可能性がある。国産米の需要を維持するためには、温暖化や渇水に対応した品種改良などを通じて安定供給を図るとともに、経営の大規模化や効率化を進め、価格・品質の両面で国産米の競争力を高めることが求められる。
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