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Economist Column No.2026-054

高市政権の地方創生:地域未来戦略、副首都構想、地方自治制度改革を踏まえた全体ビジョンの策定を急ぐべき

2026年08月19日 石川智久


■動き出す地域未来戦略――次の課題は実行体制
先般、政府の経済財政運営の基本方針である「骨太方針」が示され、地方創生についても成長戦略を踏まえた政策の方向性が打ち出された。具体的には、①地域未来戦略の推進、②都道府県の枠組みを超えた戦略産業クラスター計画の実施、③地域未来交付金の拡充、④特区制度を活用した規制・制度改革、⑤地方大学・産業創生法の施行状況を踏まえた若者の修学・就業の促進支援、などが明記されている。
これらの政策は、これまで政府が力を入れてきた方向性とおおむね一致しており、違和感はない。一部には、石破政権に比べて地方創生への熱意が低下するのではないかとの懸念もあったが、今回、幅広い政策プランが盛り込まれたことで、その懸念は杞憂に終わったとみてよいだろう。
もっとも、課題も少なくない。まず、地域未来戦略については、方向性は正しいものの、過去に同様のクラスター戦略が十分な成果を上げられなかった事実に目を向ける必要がある。成功している地域には、①地域の強みに特化している、②良いものを作るだけでなく、全国・世界に向けて積極的に発信している、③地域の大学等を有効に活用している、④地域を牽引するリーダーが存在し、スタートアップ企業のようなスピード感で行動している、といった特徴がある。したがって、議論や計画に過度に時間をかけるのではなく、実行を最優先すべきである。
また、特区制度については、これまで小粒な規制緩和にとどまるケースが少なくなかった。今後は、地域経済の起爆剤となり得る抜本的な規制緩和を認め、特区制度をより広範な規制改革の突破口として活用していく必要がある。地域未来交付金についても、単なる補助金のばらまきに陥らないよう、その効果を丁寧に検証していくことが不可欠である。政権が積極財政を標ぼうしているなかでは、特に警戒が必要であろう。さらに、地方大学が「地域のシンクタンク」として機能できるよう、改革を進めるべきである。例えば、地方大学を含む大学全体が資金難に直面しているなか、地域の資金が地域大学の活性化につながるよう、資金の地産地消を促す税制や金融商品の開発を支援することが考えられる。あわせて、大学の資産運用等に関する適切な規制改革も検討すべきであろう。

■国益を踏まえた副首都構想を
骨太方針では、防災・減災、国土強靱化の推進の一環として、副首都の整備も明記された。ここでのポイントは、①国家・社会機能の継続性の確保、②多極分散型経済圏の形成、③規制改革等を含む各種制度を活用した経済成長に資する施策の展開、である。日本は自然災害が多い国であり、南海トラフ地震がいつ発生してもおかしくないなか、首都機能を代替できる地域を整備することは喫緊の課題であり、それに応える政策である。同時に、長年の課題である東京一極集中の是正にも資する政策といえる。
もっとも、各地域が副首都に名乗りを上げるなかで、地域活性化の側面が前面に出すぎており、災害時に国の司令塔機能を担うという使命の重大さがどこまで認識されているのか、不安も残る。副首都機能の獲得は「権利」ではなく、国を守るための責務であり義務であることを忘れてはならない。また、一つの都道府県や政令市だけでは機能面で力不足となる可能性があり、都道府県間の連携のあり方についても議論を深めるべきである。加えて、現在、政府の第34次地方制度調査会では「大都市地域における行政体制、地方制度のあり方」が議論されており、副首都構想はその議論とも連動させる必要がある。副首都構想のみの議論で完結するのではなく、地方自治制度全体の改革も進めるべきだろう
さらに、骨太方針では副首都において規制改革等を含む各種制度等を活用することが明記されているが、そのためには新たに設ける副首都をまさに規制改革の実験場として位置付け、特区制度等を効果的に活用していくことも検討すべきだ。
最後に、個別の政策だけでなく、全体最適を考えていくことも重要なポイントである。その観点からは、これらの点を踏まえたうえで、地方創生や東京一極集中是正に向けた総合的ビジョンを策定していくことが求められよう。


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