リサーチ・アイ No.2026-036
バリュエーションの低さが指摘されるアジアの株式市場 ― 機関投資家の株式保有比率の低さに伴うモニタリングの不備が、企業価値向上の阻害要因に ―
2026年07月29日 桂田健吾
経済協力開発機構(OECD)は、本年6月に公表したアジアの資本市場に関する報告書「Asia Capital Markets Report 2026」のなかで、アジアの株式市場の課題として、株価純資産倍率(PBR)1倍未満の企業の比率が高いことを指摘。とりわけ、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシアでは、非金融上場法人の50%以上がPBR1倍未満。
この要因として、株主構成の偏りが存在。大半のアジア諸国では、機関投資家の株式保有比率が低い一方、企業(大半は政策保有株)、政府、個人大株主の保有比率が高い。このため、ガバナンスや資本配分の改善を促すモニタリングが十分に機能せず、バリュエーションの低下を招く一因に。
また、一部の国では、配当性向が低く投資家のリターンを押し下げていることに加え、空売りやデリバティブに対する制限が取引コストを高めていること、地政学リスクや経済政策の不確実性が高いことなども、バリュエーションの低さに影響。
こうした状況を受け、アジアの多くの国では企業価値向上計画の策定や投資家との対話など、バリュエーションの改善に向けた取組を推奨。上場維持基準の厳格化など比較的踏み込んだ施策を導入した日本では、東証プライム企業の9割が計画を開示するなど取組が浸透する一方、韓国では開示企業の割合が1割未満にとどまるなど、現時点では、国ごとの進捗に格差あり。今後、各国で取組が定着し、バリュエーションの改善が進むかを要注目。
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