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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.26,No.99

中国製造業の研究開発投資の拡大 ― 上場企業データからみた「中国製造2025」重点分野の実態 ―

2026年05月11日 関辰一


中国製造業企業の研究開発投資が拡大している。特に「中国製造2025」重点分野の投資拡大が顕著である。この動きは、中国経済を悲観論のみで捉える見方に再考を迫る可能性がある。経済成長や経済安全保障の強化に向けて、科学技術・イノベーション政策を立案・実行している日本の政府関係者、海外展開を積極化する中国企業への対応方針を検討している企業や、中国で研究開発投資を検討している企業にとって、見落とすことのできない重要な動きである。

習近平政権は「自立自強」を掲げて科学技術・イノベーション政策を推進しており、中国企業は競争力強化に向けて研究開発活動を活発化させている。米中の研究開発費が2023年と同様のペースで拡大したとすれば、2024年には購買力平価ベースで中国がアメリカを上回った可能性がある。中国全体の研究開発費の少なくとも6割は製造業企業によるものである。

中国の製造業上場企業3,699社の財務データを用いて2014年から2024年までの研究開発投資を分析すると、情報通信機器・電子部品・デバイスや電気機械など、国内外の市場が大きく成長した産業では研究開発投資が拡大した。一方で、鉄鋼業など市場の成長が停滞した産業では研究開発投資の伸びは鈍かった。

さらに業種分類を細分化して分析すると、「中国製造2025」の重点10分野における研究開発投資の合計額がここ10年で急増したことが確認できる。とりわけ、蓄電池・太陽電池、新エネルギー自動車、バイオ医薬品・医療機器、半導体、鉄道車両の5分野で研究開発投資が大きく拡大した。ただし、造船など残りの5分野では大きな伸びはみられなかった。なお、政府が重点分野として指定していない分野においても研究開発投資が大きく拡大している例がある。例えば、冷蔵庫や化粧品である。

政府補助金は研究開発投資の主要な決定要因であるとは言い難い。企業は市場が拡大している分野で研究開発投資を拡大する傾向にある。ただし成長分野では、政府補助金が企業の関心を同分野へと向けさせるとともに、政府の中長期的な支援姿勢が企業に安心感を与えることで研究開発投資を後押しした可能性がある。一方で、停滞分野では政府補助金の投資促進効果は限定的であった。

技術力が決定的に重要な自動車産業を例に企業の所有形態別の研究開発投資をみると、国有企業の投資が伸び悩む一方で、非国有企業の投資は急拡大した。国有企業はエンジン車を外資企業との合弁で展開しているため、新エネルギー自動車へ容易に転換できない状況にある。その結果、売上高は頭打ちとなっている。他方、非国有企業は新技術の導入に柔軟であったことから売上高が急増している。


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