リサーチ・レポート No.2025-018 金融政策戦略と中央銀行の独立性 - ECBの戦略再評価とわが国への示唆 - 2026年03月27日 河村小百合主要中央銀行の多くはかねてより、金融政策運営上の基本的な考え方に関する“金融政策戦略”をあらかじめ政策委員会で決定し、それを基に金融政策運営を行ってきた。コロナ危機、およびその後の高インフレ局面を経験して、その戦略見直しの動きが拡がるなか、本稿では、2025 年7 月に金融政策戦略の見直しを決定した欧州中央銀行(ECB)の検討内容を基に、わが国への示唆を考えたい。ECB は2003 年の最初の戦略策定時に「安定志向の2 本柱アプローチ」を採用し、「直接的なインフレーション・ターゲティング」や「マネタリー・ターゲティング」は明確に否定していた。日銀は従前より今に至るまで金融政策戦略は策定していないが、2013 年以降採用した金融政策はこれらに該当するため、黒田総裁ももしECBの総裁であれば「量的・質的金融緩和」は実行に移せなかった可能性が高い。中央銀行の戦略設定には、中央銀行の独立性を守る防波堤としての意味もある。ECB の戦略見直しは3回目であるが、①「安定志向の2 本柱アプローチ」のほか、②物価目標の位置付けは中期志向、③金融政策の主たる手段は政策金利、という基本姿勢については、今回に至るまで一貫して維持されている。2025 年の見直しにおいてECB は、今後のインフレ環境が変動の大きいものとなり得る点を明確にしたうえで、物価安定目標は維持しつつ、インフレ情勢の急変の際に採るべき政策対応の方向性を明確化した。また、高金利局面での深刻な副作用として、ユーロシステムにおける収益の悪化問題が顕現化したことなどを省みて、政策決定に際しては事前にシナリオ分析や感応度分析を行うことなどを明示している。さらに、2010 年代の超低金利時代の経験や反省から、可能な限りプラスのインフレ率、プラス金利を維持することを目指す姿勢を明らかにしている。日銀は2024 年12 月に『金融政策の多角的レビュー』の報告書を公表しているが、その内容は他の主要中銀が策定している“戦略”に相当するものとはなっておらず、そのための検討も行われていない。このままの金融政策運営では、わが国経済の健全な発展は望めない。日銀としても基本に立ち返り、中央銀行として本来あるべき“戦略”を検討して策定し、理路整然とした金融政策運営を行っていくことが求められている。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)