リサーチ・フォーカス No.2025-065 AI 導入、「効率化」に終われば低成長 ― プロダクト・イノベーションに向けた需要側の政策も ― 2026年02月19日 村瀬拓人、西岡慎一わが国では人工知能(AI)の活用が遅れている。中核業務にAIを本格導入している企業は主要国と比べて限られ、高付加価値サービスや都市部の大企業に偏っている。活用の多くは既存業務の効率化にとどまっており、付加価値の創出や事業モデルの変革を生み出す段階には至っていない。人口減少が加速するわが国では、今後も業務効率化を目的としたAI活用が先行しやすい。こうした利用は、人手不足の緩和に資する面もあるが、提供される製品・サービスの中身や需要構造を大きく変えない限り、経済全体への波及効果は限定的となる。試算によると、生成AIの利用が効率化にとどまる場合、経済押し上げ効果は年率0.2~0.4%に過ぎず、労働力人口の減少ペースなどを踏まえると、成長戦略と位置づけるには力不足である。地域によっては効果がほとんど現れず、格差拡大を招く恐れもある。高成長につなげるためには、AIの利用を効率化にとどめず、新たな製品・サービスの創出に振り向けることにある。そのためには、予測・最適化・常時監視などAIが持つ機能を軸に業務プロセスを再設計し、品質の向上や新しい事業の立ち上げにつなげる取り組みが不可欠である。とくに、医療、介護、物流といったエッセンシャル・サービスで付加価値の創出が進めば、経済押し上げ効果を年率1%以上に高めることも可能となり、成長底上げと格差縮小の余地が広がる。こうした「プロダクト・イノベーション」を実現するうえで最大の課題は、企業が「売れる姿」を描けない点にある。政府の「人工知能基本計画」では、研究開発や人材育成など供給側の施策が中心であるが、新製品・サービスに対する需要の予見可能性を高め、企業の投資を誘発する環境整備も欠かせない。そのためには、①公共調達、②販路開拓、③規制・制度の活用といった需要側の取り組みを拡充させることも必要となる。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)