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リサーチ・フォーカス No.2025-063

外国人留学生は定着人材となり得るのか ― 豪州の留学・学生ビザ制度にみる、労働供給としての成果と人材育成・定着の課題 ―

2026年02月02日 井上肇


わが国では少子高齢化の進行により労働供給が一段と制約を受ける中、外国人材および留学生の受け入れ規模は拡大している。しかし、その多くは大都市圏に集中しており、地域の人材不足の緩和や中長期的な成長力の底上げに十分には結びついていない。本来、留学生は若年で高等教育を受けた潜在的な人材である一方、日本の留学生制度は、就労や定着を人材政策として明確に位置づけないまま、主として教育政策の延長として運用されてきたため、留学生が地域の労働力として定着するに至っていない。

この点に関しては、豪州の事例が参考になる。豪州の留学・学生ビザ制度をみると、留学から就労、永住に至る多段階の移行経路が制度的に用意されている。もちろん、それだけで留学生が自動的に人材として定着するわけではなく、実態としては、技能不活用や一時滞在の長期化(Visa churn)が構造的に生じ、就業率や賃金水準、職業水準の面で国際卒業生は国内卒業生より不利な傾向にある。これは、在留資格の不確実性や教育・産業構造とのミスマッチに起因すると考えられている。こうした実態を踏まえると、豪州の留学生政策は、短中期的な労働力供給という点では一定の成果を上げてきた一方で、人材育成と定着を一体的に実現する制度としては課題を残している。

豪州の事例から学ぶべき点として、留学生を人材として定着させるためには、留学開始後の「後追い誘導」ではなく、入口段階から就労・定着を見据えた制度設計が不可欠であることが挙げられる。とくに、初期の就学・就業地や専攻分野がその後の定着行動に強く影響すること、在留資格の見通しが透明になると企業の人材投資が積極化すること、教育の質が制度全体への信頼性に直結し人材の定着につながることが、豪州の経験から確認できる。

以上を踏まえると、わが国において留学生制度を人材政策として位置づけるためには、受入人数の拡大にとどまらず、就労・定着を前提とした制度設計への転換が不可欠である。豪州の課題が示すように、制度を用意するだけでは不十分であり、入口設計、在留資格の予見可能性、教育の質管理を一体的に進めることが、留学生を持続的な成長を支える人材として活かす鍵となる。


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